広告運用とは?基本的な目的を解説
「広告運用」とは、Webを中心とした広告の運用を実施する業務のことです。出稿目的の設定や媒体の選定、ターゲットの絞り込み、クリエイティブの制作、運用後の改善といった業務を通じて、企業にとって最適な広告運用を実現することで、最終的な目標達成に近づけます。
運用型広告との関係
類似する言葉に「運用型広告」がありますが、両者は以下のような関係性にあります。
広告運用:ウェブ広告の運営を含め「運営に関わる業務全般」を指す
運用型広告:上記の広告運用で運営する「広告配信手法のひとつ」を指す
「広告運用で扱う手法のひとつが運用型広告である」という認識を持っておいてください。運用型広告の詳細については「運用型広告とは?定義から種類・始め方・成功のコツ」で解説しています。
広告運用の仕事内容と流れ
広告運用の仕事内容を、大まかな業務の流れに沿ってまとめました。
目標・KPIの設定
ターゲット設定
媒体選定
クリエイティブ制作
入稿・配信開始および効果測定・改善の実施
目標・KPIの設定
広告運用では、目標およびKPI(ゴール達成までに必要な中間目標)の設定が必要です。具体的な目標のイメージとして、例えば以下が挙げられます。
ECサイトの登録者数の増加
商品の初回購入者の増加
サイトへの流入数の増加
ウェビナー参加者数の増加
新商品の認知度向上
上記のような目標を定めることで、ゴール達成までに必要なアクションを洗い出し、到達に向けて適切な方向性で広告を運用できます。
目標については、「サイト登録者数を前年比◯◯%まで増やす」「商品の初回購入者を増加させて売上を前年より□□%アップする」といったイメージで、数値で定めることが大切です。目標を定量化することで、ゴール達成までに「どの数値が・どのくらい不足しているのか?」を明確に把握できるため、より的確に運用方法を改善できます。
ターゲット設定
目的を踏まえつつ、企業がアプローチすべきターゲットを絞り込みます。
ターゲットについては「特定の顧客像を思い浮かべられるレベル」まで、具体的に洗い出すことが大切です。例えば、以下のような要素を詳細に洗い出してください。
名前/年齢/性別/職業/収入/学歴/家族構成/居住地/性格(価値観・人生観)/趣味/余暇の過ごし方/人間関係(友人の数など)/利用しているSNS/好きなサイトやアプリ , etc. |
細かくターゲット像を洗い出すことで、以下のような点を意識できるようになり、より効果的な広告運用を実現可能です。
ターゲット層の利用が多い広告媒体を適切に選定する
ターゲットに刺さるキャッチコピーを考える
ターゲットが広告を見るであろう時間を予測して配信する
ターゲットの年代が好むデザインを活かしてLPを制作する
なお、上記のように特定の顧客像が思い浮かぶレベルまで設定したターゲットを「ペルソナ」と呼びます。広告運用を含めたマーケティング活動では、ペルソナを設定しておくことで施策の方向性を明確化できます。詳細については、「ペルソナの作り方は?マーケティング業務で活用するポイントも解説」をご覧ください。
媒体選定
出稿目的やターゲット設定を踏まえて、出稿すべき適切な広告媒体を選定します。広告運用で使われる主な媒体としては、リスティング広告やディスプレイ広告、SNS広告、動画広告が挙げられます。媒体ごとで利用者層やユーザーの特徴、相性がよい商材などは異なるため、PRしたい商材やサービスの特性を踏まえて、適切な媒体を選ぶことが大切です。各媒体の特徴などは、「広告運用でよく使われる媒体の種類」の章で詳しく解説しています。
クリエイティブ制作
広告の出稿媒体を決めたら、実際に使用するクリエイティブを制作します。クリエイティブについては、出稿目的やターゲットから逆算して「どんなメッセージを・どのように表現したら伝わるのか?」を考えることが必須です。
クリエイティブ制作では、主に以下のような業務を実施します。
広告に表示するキャッチコピーや説明文を作成する
広告用の宣材写真や動画を撮影する
LPの構成を検討する
広告媒体のガイドラインと照らし合わせ出稿内容に問題がないかチェックする
とくにガイドラインについては、万が一違反すると広告を出稿できないケースもあります。例えば、SNS広告のひとつであるLINE広告の場合、化粧品のクリエイティブについて「シミやニキビといった症状のアップ写真を掲載して不快に感じさせる」「安全性を過度に強調する」といった表現は使用できません。
参照:LINEヤフー for business|LINE広告審査ガイドライン
媒体ごとのルールを遵守しつつ、ターゲットに刺さる適切な広告を作成するスキルが求められます。
入稿・配信開始および効果測定・改善の実施
クリエイティブを入稿し配信設定まで完了したら、運用を開始します。運用後は、最初に設定したKPIに従って新規ユーザー数やクリック率、コンバージョンなどの数値を計測し、課題点を洗い出すことで適宜広告を改善してください。例えば「LPへの遷移数は多いが購入まで結びつかないのでLPを見直す」「広告のクリック率が低いのでキャッチコピーや写真を見直す」といったイメージです。数値をもとに効果測定し改善を続けることで、少しずつ理想の成果へ近付けられます。
広告運用に必要なスキル
広告運用に必要なスキルとしては、大きく以下が挙げられます。
幅広いデータの分析スキル
クリエイティブ制作スキル
予算管理や入札調整スキル
市場・競合リサーチスキル
幅広いデータの分析スキル
広告運用で理想のゴールを達成するには、以下のように幅広い場面でデータを分析するスキルが必要です。
クリック率やコンバージョン、新規ユーザー数などを計測し数値の改善策を設計する
過去の購買履歴をもとに自社がアプローチすべきターゲット層を洗い出す
ターゲットのニーズや好みを踏まえて刺さるメッセージを設計する
ターゲット属性を踏まえて最適な広告媒体を選定する
運用後の数値を参照しつつ、より適切な配信タイミングや頻度を設計する
広告への流入経路を洗い出し、予算を投下すべき媒体の優先順位を考える
制作したクリエイティブでA/Bテストを実施して、広告の最適化を目指す
上記のようなターゲティングや媒体選定、クリエイティブ制作、運用後の数値改善など、あらゆる場面で適切にデータ分析できるスキルがあれば、最終的な目標を意識しつつ正しい方向性で広告を運用可能です。
クリエイティブ制作スキル
広告運用のクリエイティブ制作では、キレイで見やすいだけでなく「出稿目的やターゲットなどを見据えたクリエイティブ制作」が求められます。具体的には、以下のような観点を持ったうえでクリエイティブ制作が必要です。
ターゲットが思わずクリックしたくなるキャッチコピーを作成できるか?
商材の魅力を広告文や動画でわかりやすく表現できているか?
ターゲットが好むデザインや画像、動画を使用しているか?
ターゲットの悩みをスムーズに解消する流れでLPを制作できているか?
また、顧客がクリエイティブへの要望を上手く言語化できていないケースもあります。要望を汲み取れなければ理想の成果につながる広告は運用できないため、丁寧なヒアリングを通じて顧客が求めるクリエイティブのイメージを引き出し、制作で反映させる意識も必要です。
予算管理や入札調整スキル
広告運用では、「どの広告に・どのくらいの予算を投下すべきか?」という判断が必要です。こうした予算管理では、以下のようなイメージで根拠を踏まえたうえでの判断が求められます。
◯◯広告経由のユーザーは成約率が高いので予算を多めに配分しよう
来月は新商品の発表があるので集中的にアプローチできるよう今は予算を抑えよう
ターゲット層的に□□広告媒体であれば接点を作りやすいので予算の増額を相談しよう
とくに広告運用代行ではクライアントの予算を扱うため、費用対効果を高め満足してもらえるよう、詳細に現状を分析し適切に予算を管理するスキルが必要です。
市場・競合リサーチスキル
最適なクリエイティブを制作し成果の出る広告運用を実現するには、以下のような観点で市場および競合のリサーチが必要です。
市場における自社のポジショニングは?
競合他社より優れた差別化ポイントは何か?
市場ではどのような広告がトレンドなのか?
市場のターゲットはどのような悩みを解消したいのか?
自社が置かれた市場の現状や競合他社の状況を把握することで、広告のトレンドを押さえつつ、競合より魅力的なポイントを引き出したうえで広告運用を実施できるようになります。
広告運用でよく使われる媒体の種類
広告運用で活用される媒体には、さまざまな種類があります。本記事では、以下の主な媒体をまとめました。
リスティング広告(検索連動型広告)
ディスプレイ広告(バナー広告)
SNS広告
動画広告
リスティング広告(検索連動型広告)
「リスティング広告(検索連動型広告)」とは、GoogleやYahoo!などで検索した際の結果画面に表示する広告のことです。以下のように、主に「記事のURL・タイトル・説明文」を表示できます。

広告は基本的に、検索結果画面の上部に表示されます。通常の検索結果画面の上位10記事より上に表示されるため、ターゲットのニーズを踏まえ適切なキーワードで出稿できれば、ユーザーの目に留まりやすくなり多くのサイト流入が期待できます。「特定のキーワードで検索している=購買意欲が高い」ユーザーへアプローチできるため、短期間でのコンバージョンを期待できる点も魅力です。
リスティング広告の特徴や具体的な出稿方法などは、「リスティング広告とは|費用や仕組みを徹底解説【初心者向け】」で解説しています。
ディスプレイ広告(バナー広告)
「ディスプレイ広告(バナー広告)」とは、以下のイメージでウェブサイトやアプリ内に設定された広告枠に出稿できる媒体です。画像・動画・テキストを組み合わせることが多いため、「バナー広告」とも呼ばれます。

ディスプレイ広告では、ターゲットに限らず潜在ニーズを抱えるユーザーも含めて幅広くアプローチできます。そのため、今まで接点がなかった新たなユーザーへリーチしやすい点が魅力です。とくに、画像や動画を活用し視覚的に訴求できるため、今まで接点がないユーザーであっても興味を持ってもらえる可能性が高いかもしれません。
SNS広告
「SNS広告」とは、X(旧Twitter)やFacebook、Instagram、TikTokなどの各種SNSへ出稿できる広告のことです。媒体によって若干異なりますが、テキストや画像、動画だけでなく、リンクやハッシュタグも活用できます。
SNSは、プラットフォームごとでメインのユーザー層が異なります。そのため、自社がアプローチすべきユーザー層にマッチするSNS上で広告を出稿できれば、効果的にリーチできるかもしれません。
特にSNSでは、いいねやリポスト、シェアなどを活用し、ユーザーが自発的に拡散する可能性があります。ユーザーが情報を広げてそのフォロワーが広告を目にすれば、企業は追加コストを投下しなくても、認知度アップや新規顧客の獲得を実現できるかもしれません。
具体的なSNS広告の種類や導入メリットなどは、「SNS広告とは|各SNS広告の特徴、費用、選び方を解説」で詳しく解説しています。
動画広告
「動画広告」とは、YouTubeなど動画主体のメディアに出稿できる広告のことです。動画やアニメーション、音声などを活用した広告を出稿できるため、画像やテキストよりもユーザーの興味を惹きやすい点が特徴です。
とくに動画広告の代表格でもある「YouTube広告」であれば、全世代の9割近くが利用しているYouTube上で広告を出稿できます。そのため「潜在顧客へアプローチしたい」「既存顧客のフォロー強化に使いたい」「新商品の認知度向上につなげたい」など、幅広い用途で活用できる点が魅力です。
YouTube広告の具体的な種類や課金形態などは「YouTube広告とは?広告種類から目的に応じた選び方、出稿方法まで徹底解説」で詳しく解説しています。
広告運用で成果を出すポイント
広告運用で成果を出すには、以下のポイントを意識してください。
最終目標とKPIを明確に定める
クリエイティブのA/Bテストを実施し定期更新する
除外キーワードを設定する
配信対象を最適化する
「広告」と「LP(ランディングページ)」の整合性を修正する
広告を出したまま放置せず継続的に改善を続ける
最終目標とKPIを明確に定める
必ず広告運用における「最終目標・KPI(中間目標)」を設定してください。最終ゴールと到達までに必要な中間目標を定めておくことで、達成までの全体的な道筋を明確に把握し「いつまでに・どんな施策に・どのように取り組むべきなのか?」という点を正しく判断できます。
もし最終的なゴールや中間目標がわからなければ、「施策を実行しているが本当に売上につながっているか判断できない」という状況になりかねません。無駄なコストばかり投下する事態になりかねないため、必ず最終目標とKPIは設定してください。
目標設定の際は「SMART」を意識することがオススメです。「SMART」とは、効果的な目標設定のために活用できるフレームワークのことです。以下5つの要素を意識することで、より現実的に達成できる目標を設計できます。
Specific(具体的):具体的かつわかりやすく設定する
Measurable(計測可能):数値や期限などを定量的に設定し成果をチェックしやすくする
Achievable(達成可能):リソースや期限などを考慮して現実的に達成可能な目標を設定する
Relevant(関連性):経営目標や理念などとマッチしている
Time-bound(期限):明確な期限を設けていつまでに達成すべきか明確化している
クリエイティブのA/Bテストを実施し定期更新する
広告を出稿しても、一度目で理想の成果が出るとは限りません。「想定より広告のクリック率が低い」「動画の試聴時間が思ったより短い」など、当初の想定を下回ることも十分あり得ます。そのため、定期的に「A/Bテスト」を実施して改善ポイントを洗い出し、クリエイティブの内容を更新してください。
「A/Bテスト」とは、一部条件を変えて複数の広告を出稿し成果を比較する手法を指します。例えば、広告A・Bの2種類を用意して「キャッチコピーを変える」「LP内のCTA(商品購入や会員登録などを促すボタン)の位置を変える」といったイメージです。こうしたテストを繰り返し適切に改善点を洗い出すことで、より効果的な広告へとブラッシュアップできます。
除外キーワードを設定する
「除外キーワード」とは、ユーザーが特定のキーワードを含む言葉で検索した際、広告を出稿させない設定のことです。除外キーワードを設定することで、ユーザーが「成約率が著しく低い」「ターゲット層のニーズに合わない」などに該当するキーワードで検索した際は、配信を回避できます。
広告運用では、表示されたりクリックされたりしても課金が発生するため、コンバージョンにつながりにくいユーザーへの配信を避けることは重要です。
配信対象を最適化する
広告運用では、以下のような情報をもとに配信ターゲットを細かくセグメント分けできます。
性別
年代
居住地域
興味・関心
主な利用デバイス
サイト上の過去の行動履歴
, etc.
上記の項目を意識し、ターゲットに近いユーザーへピンポイントで配信することで、コンバージョンしやすい相手に絞り効率的にアプローチできます。配信対象のセグメント分けはカスタマイズできるため、運用の成果を見ながら修正する意識が大切です。
「広告」と「LP(ランディングページ)」の整合性を修正する
表示した広告のキャッチコピーや画像がターゲットにマッチしても、「LPをクリックしたら自分の想像していたサービスではなかった」「LPの内容がキャッチコピーの印象と著しく違う」などの事態が起きると、ユーザーの期待を裏切ってしまうため、コンバージョンを達成できません。
広告を見て期待を抱いたユーザーがLPの内容に満足し、自然とコンバージョンへ到達できるよう「広告の印象」と「LPで伝えるメッセージ」が一致していることをチェックしてください。
広告を出したまま放置せず継続的に改善を続ける
広告運用では、一度出稿しただけで理想の成果を出せるとは限りません。クリック率が想定を下回ったり、目指すコンバージョンまで到達しなかったりするケースもあります。
上記の状態を放置し漫然と広告を出稿し続けると、「成果が出ない施策にコストを支払うだけ」という状況になりかねません。とくに資金面が限られる中小企業では、なおさら余計な支出を増やすことは避けるべきです。
長期的な視点で理想の成果を残せるよう、上記で紹介した「A/Bテストでクリエイティブを改善する」「配信対象のセグメント分けを見直す」などのポイントを意識しつつ、継続的に改善を続けてください。可能であれば週単位で効果を測定し、改善点を定点観測する習慣を付けることが理想です。
自社運用と代理店依頼の判断基準
このように、広告運用ではさまざまな業務が発生するため「自社で対応できるか?」と不安を抱えるかもしれません。広告運用を内製化すべきか迷った際は、ぜひ以下の基準を参照し判断してみてください。
自社運用が向いているケース
自社運用が向いているケースとしては、以下が挙げられます。
広告運用に投下できる予算が少額である
広告運用の専門知識を持つ担当者が在籍している
広告運用に使えるリソースを確保できる
自社で広告運用の知見を蓄積したい
自社運用であれば、代理店への依頼費用はかからないためコストを抑えられます。とくに資金面に限りがある中小企業にとって、コストを抑えられるというのは魅力的です。
また、広告運用では媒体選定やクリエイティブ制作などの専門知識が必要なため、専門スキルを持つ人材が在籍している企業であればスムーズに運用できます。仮に「現時点では人材がいない」という場合も、人材教育を含めて広告運用に投下できるリソースを確保できるなら、自社運用を検討することがオススメです。
さらに早期から自社運用に取り組んでおけば、数値の計測やクリエイティブ改善の知見などが蓄積されます。もちろん、知見が蓄積されるまでは思うように運用できないかもしれません。しかし長期的な視点で見れば、社内で専門的な知見を深められるというのは大きなプラスです。
代理店依頼が向いているケース
代理店依頼が向いているケースとしては、以下が挙げられます。
高額な運用の予算を確保できる
幅広い広告媒体を運用したい
社内のノウハウ・リソース不足を補いたい
代理店へ依頼する際は、(企業によって異なりますが)「広告費の20%」あるいは「月額固定報酬制」のコストがかかります。そのため広告の出稿費用以外に、予算を十分確保できる企業にオススメです。また、代理店なら媒体の種類を問わず豊富な運用知識を持っているため、「複数の広告手法を組み合わせたい」といったニーズにも柔軟に応えられます。
さらに、初期段階からプロの専門的な知見を活かして広告運用できるため、よりスピーディに施策を改善し理想の成果へ近付けられる点も魅力です。確かに依頼費用はかかりますが、長期的には高い売上を生み出して費用対効果を高められることが期待できます。
代理店へ依頼する際のメリットやオススメの企業などについては、「広告運用代行とは?利用のメリット、依頼できる業務、費用対効果の高め方」で詳しく解説しています。