消費行動や消費者のニーズは年々多様化しています。顧客ニーズを正確に捉えた戦略を立案・実行するために、顧客像をより具体的にイメージするための手法が「ペルソナ」です。
しかし、「ペルソナをどう作ればよいのか?」「作ったペルソナをどのようにマーケティング業務に活かすのか?」と疑問に感じる方もいるでしょう。
本記事では、マーケティング担当者向けに、ペルソナの作り方やコツ、そしてマーケティング業務での活用事例について解説します。
消費行動や消費者のニーズは年々多様化しています。顧客ニーズを正確に捉えた戦略を立案・実行するために、顧客像をより具体的にイメージするための手法が「ペルソナ」です。
しかし、「ペルソナをどう作ればよいのか?」「作ったペルソナをどのようにマーケティング業務に活かすのか?」と疑問に感じる方もいるでしょう。
本記事では、マーケティング担当者向けに、ペルソナの作り方やコツ、そしてマーケティング業務での活用事例について解説します。
目次
ペルソナとは、「自社のサービスや商品を提供する際に、具体的な状況を想定して設定する架空の顧客像」のことです。
ペルソナを設定することで、顧客ニーズを詳細に把握できるだけでなく、社内の担当者間で顧客像の認識が統一されるため、マーケティング業務の成功率や効率性を高めることができます。
ペルソナを作成する際は、具体的な人物像をイメージし、顧客の行動やニーズを推測できるように、細かい属性をしっかりと設定することが重要です。
▼ペルソナで設定する属性の例
名前
年齢
性別
職業
収入
学歴
家族構成
居住地
性格(価値観・人生観)
趣味
余暇の過ごし方
人間関係(友人の数など)
習慣買い物をする場所
利用しているSNS
好きなサイトやアプリ
情報源の種類(WEB、新聞、雑誌、TV)
所持しているPC、モバイル端末
仕事上の目標、課題、挑戦したいこと
「ペルソナ」と比較されることが多い用語に「ターゲット」があります。ターゲットとは、年代や性別といった見込み客の属性を示したものです。ターゲットを設定することで、サービスの対象市場や顧客を絞り込み、マーケティング戦略を立てやすくなります。
一方、ペルソナはライフスタイルや心理面まで想像できるように、ターゲットよりもさらに詳細に人物像を設定します。ペルソナを通じて潜在ニーズを汲み取ることで、顧客にとって本当に必要なサービスを無理なく提供できるようになります。
▼ターゲット(例)
40代
会社員
▼ペルソナ(例)
名前:藤井貴浩
年齢:47歳
家族構成:既婚(妻47歳、長女20歳、長男15歳)
生活:関西地方より中国地方に単身赴任中
職業:マーケティング部長
▼ペルソナの活用シーン(一例)
カスタマージャーニーの検討
MAのシナリオ作成
コンテンツ設計
CVR改善
SNSマーケティング
ペルソナを設定することには、企業活動において多くのメリットがあります。営業や商品開発など幅広い分野で活用できますが、ここではマーケティングに特化して、2つのメリットを解説します。
ペルソナを設定する際、具体的な顧客像をイメージして作り上げることで、顧客への理解が深まります。
顧客に対する解像度が高まることで、自社サービスの強みや、顧客が「どんなシーン」で「どのように」商品・サービスを利用したいか、といったニーズを的確に把握できるようになります。これにより、顧客に響く訴求ポイントを特定しやすくなるのが大きなメリットです。
また、顧客の行動に沿ったマーケティング施策を打ち出すことができ、施策の成功率が向上する点も見逃せません。
あらかじめペルソナを社内で共有しておくことで、顧客像の統一が図れ、マーケティング施策の精度が向上します。これにより、施策の効果が上がり、結果的に顧客満足度の向上にもつながります。
一方、顧客イメージが社内で統一されていない場合、商品開発や宣伝、販売促進などの施策を検討する際に、社員ごとに異なる顧客像を想定してしまい、話し合いがスムーズに進まなかったり、効果的な広告が作れない可能性があります。
このような状態では、商品を必要としているユーザーに適切なアプローチができず、顧客満足度にも悪影響を及ぼすかもしれません。
さらに、近年では多くの企業がマーケティング戦略の一環として、SEOなどのコンテンツ作成に取り組んでいます。ペルソナを明確にしておくことで、ユーザーにとって必要な情報を提供でき、コンテンツに統一感を持たせることが可能になります。
正しいステップを踏んでペルソナを作成すれば、マーケティングにおいて大きな効果を発揮します。ここでは、実務で使えるペルソナの作り方を5つのステップに分けて解説します。
ペルソナ設定における自社分析とは、自社の内部状況、能力を把握し、現状の強み弱みを整理することです。自社分析を行うことで、アプローチすべき顧客がより明確になります。
自社分析には複数のフレームワークがありますが、特に使われるのが「3C分析」です。顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの視点から自社を分析し、強み・弱みを明確にすることで、マーケティング戦略の立案にも役立ちます。
▼3C分析の3つの要素
Customer(市場・顧客)
Competitor(競合)
Company(自社)
また、自社の状況や業界環境の変化により、強み・弱みが変わることもあります。常に正しい自社の立ち位置を把握するためにも、自社分析は定期的に見直すことが重要です。
ペルソナ設定は、マーケティングだけでなく営業や商品開発にも活用されます。ただし、目的に応じて設定すべき項目は異なるため、事前に決めておくことが大切です。
例えば、マーケティングで設定するべき項目の一例は以下のとおりです。
▼マーケティングで設定すべきペルソナの項目(例)
年齢
性別
居住地域
住所情報(持ち家、賃貸、実家など)
最終学歴
職業
年収
家族構成
趣味
SNSタイムスケジュール(1日の流れ)
抱えている悩み
欲求
前項で決めた項目に基づき、必要な情報を収集します。情報収集の際には、さまざまな情報源から多角的にデータを集め、ペルソナを深く理解することが重要です。具体的には、以下の方法が考えられます。
収集した情報をもとに、ペルソナの要素を箇条書きでまとめます。この際、ストーリー形式で肉付けを行うと、より具体的なペルソナ像が浮かび上がります。
ペルソナシートを作成し、年齢、職業、行動パターン、思想などをまとめると、顧客心理がさらに明確になります。よりリアルなイメージを持たせるため、顔写真を追加するのも効果的です。
ペルソナは作成して終わりではなく、定期的に見直しが必要です。作成したペルソナと収集した情報に齟齬がないか、現実とかけ離れていないか確認しないと、ユーザーのニーズを正確に把握することが難しくなります。
市場調査や顧客・営業部門へのインタビューを通じて、ペルソナが現実に即しているかをチェックしましょう。また、顧客の価値観が変化する可能性もあるため、定期的にペルソナの見直しを行うことが重要です。
ペルソナを実務で使いこなすには、単にペルソナを作るだけではなく、質の高いものを作ることが欠かせません。ここでは、ペルソナの作り方で覚えておきたい3つのコツを解説します。
ペルソナを設定する際は、収集した情報をもとに、できるだけ正確で詳細なペルソナを作成することが大切です。顧客へのインタビューなど、一次情報を活用することが基本となります。必要に応じて、写真や動画を取り入れると、より具体的なイメージが得られるでしょう。
ただし、現実離れしたペルソナを作り込んでも、マーケティングには活用できません。主観を排除し、収集した情報に基づいてリアリティのあるペルソナを作成することが重要です。顧客の認知から購入までのストーリーを自然にイメージできるようにすることがポイントです。
ビジネスの形態には、BtoB(法人向け)とBtoC(個人向け)の2つがあります。これらの特性に応じて、ペルソナに盛り込む内容も変える必要があります。
BtoBビジネスでは、認知から購入に至るまでに複数の人物が関与することが多く、購入者と利用者が異なることも珍しくありません。そのため、ペルソナには、対象個人の役職や組織内での立場を盛り込むことが求められます。また、決裁者、推進者、担当者それぞれのペルソナを作成すると、より実態に即したマーケティング戦略が立案できます。
一方、BtoCビジネスでは、認知から購入・利用までを基本的に同一人物が行います。そのため、ペルソナでは対象となる個人の立場やニーズに焦点を当てて設定することが重要です。
マーケティング施策がうまくいかない場合、ペルソナ設定自体が適切でない可能性があります。そのため、施策の効果が期待できないと感じたときこそ、ペルソナを見直す必要があります。
たとえば、商品やサービスのターゲットが変わった場合や、社会情勢の変化によって消費行動が変わった場合は、ペルソナの更新が必要です。定期的にペルソナを見直すことで、常にユーザーの行動を正確に把握し、効果的なマーケティング施策を実施できるようになります。
ここまでペルソナの意味や作り方などを解説してきましたが、ペルソナと併せて理解しておきたい概念に、カスタマージャーニーマップがあります。
カスタマージャーニーマップは、顧客が商品・サービスを知ってから購入するまでを「旅」として可視化するものです。
カスタマージャーニーマップは、ペルソナを設定した後に、より深く顧客の顧客の購買行動の詳細や体験を理解したいときに役立ちます。また、ペルソナへの理解を深め、顧客に合わせたマーケティング活動を行うためにも有効です。
そこで、ペルソナを設定した後に、カスタマージャーニーマップを作成する手順を解説します。
カスタマージャーニーマップ作成では、問い合わせ数の増加やカゴ落ちの抑制など、さまざまな目的が考えられます。
いくつかある目的の中から達成したいものを決めることで、設定すべきゴールや必要な情報が明確になります。ゴールを設定したら、そのゴールまでの道筋を具体的に定めましょう。
ゴールまでの道筋は、フレームワークを使って顧客のタッチポイントを時系列で整理することで効率的に作成できます。代表的なフレームワークを3つ紹介します。
Attention(認知)
Insterest(興味)
Desire(欲望)
Memory(記憶)
Action(購買行動)
Attention(認知)
Interest(興味)
Search(検索)
Action(購入)
Share(感想シェア)
Discovery(コンテンツ発見)
Engage(関係性構築)
Check(商品情報確認)
Action(購入)
eXperience(体験共有)
顧客が商品を認知してから購入に至るまでのプロセスで、タッチポイントごとの行動や感情の変化を整理して書き出しましょう。
これにより、時間軸に沿った顧客の状態・行動・タッチポイントが明確になり、顧客の変化を把握しやすくなります。また、他部署へのヒアリングや社外の人物へのインタビューを行うことで、顧客行動の詳細をより正確に把握できるようになります。
認知から購買までの各プロセスごとにKPIを設定しておくと、カスタマージャーニーのどの部分に大きな課題があるかが明確になります。KPIと実績を比較し、実績が大幅に下回っている部分は優先的に改善しましょう。
また、現状よりも優れたカスタマージャーニーが存在する可能性もあります。顧客インタビューや口コミリサーチを行い、カスタマージャーニーを見直して改善を繰り返すことは、マーケティング業務の改善にもつながります。
さらに、カスタマージャーニーマップについて意思統一がされていない場合、マーケティング施策の全体像が見えなくなり、現場が混乱する可能性があります。関係者の意見が分かれた際には、合意が得られるまで十分に議論することが重要です。
ペルソナは、マーケティング業務のさまざまなシーンで活用できます。ここでは、ペルソナをどのような場面で活用できるのか、3つの具体例を紹介します。
自社で運営するオウンドメディアの戦略立案にペルソナを活用することで、ターゲットとなるユーザーの行動が明確になり、使用するメディアの種類やコンテンツの内容、配信戦略を策定しやすくなります。
例えば、コンテンツSEO記事を作成する際、ペルソナを利用することで顧客の傾向やニーズを把握しやすくなり、検索キーワードの選定や本文執筆、バナー広告の配置場所の決定が効率的に行えます。
コンテンツSEOに関しては「コンテンツSEOとは?長期的な集客を実現するポイントを事例とともに解説」で詳しく解説しています。
現代では多くのSNSがマーケティングに利用されていますが、SNSごとに主要ユーザー層や特性が異なります。ペルソナを活用することで、製品やサービスのPRに最適なSNSの選定や、顧客ニーズの把握が可能です。
例えば、自社SNSアカウントのフォロワーや顧客アンケートの結果を分析することで、顧客の年齢や性別といった基本情報が得られます。これを基にペルソナを作成し、購買行動や潜在ニーズを把握することで、最適なSNSの選定や投稿の効果を最大化するタイミングを把握できます。
SNSマーケティングについては「SNSマーケティングとは?5つの手法や運用方法、成功のポイントを紹介」もご覧ください。
ユーザーが商品を認知してから購入に至るまで、興味を引き続けることで、CVR(コンバージョン率)の向上につなげることが可能です。
CVRは「コンバージョン数 ÷ サイト訪問者数」で算出されるため、同じアクセス数でもCVRが高いほど訴求力が高まります。自社製品の売上アップに直結するCVRを高めるには、ペルソナを活用したユーザーの購買行動やニーズの把握が効果的です。
例えば、ペルソナの年齢や性別、家族構成などの詳細情報をヒアリングやインタビューを通じて収集し、その結果をSNS投稿やブログコンテンツに反映させることで、CVRの向上が期待できます。
また、ファーストビューでの離脱を防ぐためのLP(ランディングページ)の改善や、コンテンツ全体の導線設計にペルソナを活用することで、CVRをさらに高められます。
なお、「CVRとは|意味、計算・計測方法、改善施策を解説【マーケティング初心者向け】」でCVRについて詳しく解説していますので、そちらも参考してみてください。
いくら優れたペルソナを作成しても、適切に活用できなければ、マーケティング業務で期待する成果は得られません。ここでは、ペルソナを効果的に活用するための2つのポイントを解説します。
ペルソナをマーケティングに活用する際に重要なのは、ユーザーが必ずしも自社にとって理想的な購買行動を取るとは限らないということを理解することです。
理想は、自社の商品を認知してからそのまま購入してくれることですが、現実ではユーザーがすぐに購入に進むとは限りません。商品を認知するきっかけも、SEOブログや展示会など複数の接点があるのが一般的です。
そのため、ペルソナごとに最適な接点を選び、それぞれに応じた商品特徴をアピールすることが大切です。こうすることで、より多くのユーザーに訴求でき、購入につながる可能性が高まります。
さらに、商品への接点を見つけるには、既存の商品やそのカテゴリーを調査し、ユーザーがどのような不満や課題を抱いているかを特定することが有効です。これにより、ユーザーがどのような状況で商品と接点を持つかを洗い出せます。
商材によっては、複数の代表的なユーザーを想定し、それぞれにペルソナ設定を行うことが効果的です。
例えば、同じ日焼け止めでも、マリンスポーツを楽しむ男性と、外出時の汗を気にする女性という異なるターゲットが考えられます。これらの異なるユーザーを1つのペルソナにまとめるのは適切ではないため、それぞれ別々にペルソナを設定すべきです。
このようにペルソナごとに訴求ポイントやマーケティング戦略を変えることで、より多くのユーザーにリーチでき、購入の可能性が高まります。
また、BtoBマーケティングにおいては、利用者と決裁者が異なることが多いです。両者に対して別々のペルソナ設定を行うことで、それぞれのニーズに合わせたマーケティングが可能になり、両者を引きつけることができます。
ペルソナは、ターゲットよりも細かく設定するため、顧客視点の理解や顧客像の共有に役立ちます。
自社分析や目的に応じた項目の収集、詳細な作り込み、定期的な見直しといった正しい手順を踏むことで、顧客視点に立ったマーケティング活動を実現できます。また、ペルソナはカスタマージャーニーマップや他のマーケティング業務と組み合わせることで、顧客ニーズを的確に捉えた戦略の立案と実行が可能です。
ただし、ノウハウやリソースが不足していると、自社だけでペルソナの設定や活用を行うには限界があるかもしれません。もしマーケティングにおいてペルソナの設定や活用でお困りの場合は、豊富な実績を持つCoziesにご相談ください。
ペルソナは、以下の5ステップで作ります。
自社の分析を行う
ペルソナで設定する項目について決定する
ペルソナの設定に必要な情報を収集する
具体的にペルソナを設定する
ペルソナの見直しを行う
ペルソナを作れば、ユーザーのニーズや消費行動を把握できます。オウンドメディアの戦略立案やSNSマーケティング、さらにはCVR向上などマーケティング活動のあらゆる場面で有用です。