オールインワンツールとは?基本的な意味を解説
まずは、ビジネスにおける「オールインワンツール」の定義を確認しましょう。「オールインワンツール」とは、さまざまな業務の遂行に必要な機能を、ひとつのプラットフォーム上にまとめたツールのことです。

まとめられる業務の例としては、以下が挙げられます。
チャット
タスク管理
ドキュメントなどの文書作成
ファイル共有
カレンダーの確認
オンラインビデオ会議の開催
社内Wikiの運用
承認フローの管理
さらに細分化すると、業界独自の慣習に対応したツールや、ワークスペースをベースに運用できるツールなどもあります。
このように種類が豊富なため、初めて導入を検討する企業では、違いを判断しづらく迷うかもしれません。
そのため、自社にとって適切なツールを選ぶにあたっては、まず「業務遂行に必要な機能をひとつのプラットフォーム上にまとめたものがオールインワンツール」というベースの考え方を押さえることが大切です。
オールインワンツールのメリット
幅広い業務に対応した機能をひとつのプラットフォーム上で使えるため、ツールを逐一切り替える手間を減らし、日々のタスクをスムーズに遂行できます。用途が噛み合えば、複数ツール契約を減らせるため、トータルのコストも抑えられるでしょう。また、ツールごとに改めて操作方法を覚える必要もありません。
そのため「複数ツールを導入しているが従業員が使い方を覚えるのに苦労している」「情報の格納場所が整理されておらず詳細の把握に苦労している」といった企業に最適です。
オールインワンツールの基本的な種類
オールインワンツールには、大きく以下の3種類があります。詳細はツールごとで異なりますが、基礎的な分類を知っておくと、選ぶ際の参考にできるでしょう。
種類 | 範囲 |
|---|
コラボレーション型 | チャット・タスク管理・ドキュメント作成・ファイル共有など、日々の業務をひとつのワークスペースに統合するタイプ。 |
業務基盤型 | 会計・販売管理・在庫管理・人事労務など、バックオフィス業務をカバーできるタイプ。業務プロセス全体の業務効率化に重きを置いている。 |
特定部門統合型 | 営業・マーケ・カスタマーサクセスなど、特定部門の業務をひとつのプラットフォームにまとめるタイプ。例えば「SFA+MA+サポート領域」といったイメージ。 |
どのタイプが自社に合うか見極めることで、「なんとなく便利そう」ではなく、自社の業務や組織構造にフィットしたオールインワンツールを選びやすくなります。
特化型ツールとの「運用管理」に関する考え方の違い
特化型ツールとは、特定の目的達成に必要な機能を搭載したツールのことです。具体的には、勤怠管理ツールや顧客管理システム(CRM)、営業支援システム(SFA)、人事労務システム、会計管理システムなど、多岐にわたります。
この特化型ツールとオールインワンツールには、「運用管理」の考え方に関して以下のような違いがあります。
特化型ツール:各業務に合わせてツールを導入するため、種類が増えると管理方法も変える必要がある。
オールインワンツール:ひとつのアカウントで複数機能を使えるため、比較的シンプルに管理できる。
それぞれにメリットや管理する際の負荷があるため、自社のリソースなどを踏まえて判断しましょう。

特化型ツールの運用管理に関する考え方
「勤怠を管理する」「営業進捗を管理する」というように、特定の目的に絞った機能が搭載されています。一度使い方を覚えればシンプルに運用しやすく、「機能が多すぎて使いこなせない」といった心配はあまりありません。
一方で、社内のニーズに合わせて導入ツール数を増やすと、アカウント管理やマニュアル整備などの運用工数が増えます。また、ツールごとで使い方を覚える必要があるため、社内で浸透するまで時間がかかるかもしれません。
オールインワンツールの運用管理に関する考え方
ひとつのアカウント上で幅広い業務に対応した機能を使えるため、アカウント発行や削除、権限変更などを比較的シンプルに管理できるでしょう。
一方で、各機能の操作性や使い分けの判断などに慣れるまで、多少の時間がかかるかもしれません。
オールインワンツールが注目されている理由
オールインワンツールが注目されている理由として、主に「導入できるツールの種類が増えすぎたことで、かえって現場に混乱やムダが生まれている」という状況が挙げられます。
そもそも現在では、以下のように多種多様なツールが開発されています。
チャットツール
顧客管理システム(CRM)
営業支援システム(SFA)
勤怠管理システム
会計ソフト
人事労務管理ソフト
さらに各ツールの中でも、業界や業種、業務シーンなど、特定場面での利用に特化したツールが登場しています。
こうした状況で、ニーズにマッチするツールを複数導入し、ツール数を増やしすぎると、以下のような事態が発生するかもしれません。
情報の格納場所がわからず必要なときにすぐに検索できない
各ツールの権限の変更手続きが多く時間がかかる
毎月の支払いコストが膨大になる
現場の従業員が使い方に慣れるまで時間がかかる
情報共有にロスが生じたり、情報の所在がわからなかったりするケースが増えると、チームや部署内が混乱し、業務の進行に大きな影響を及ぼすかもしれません。
中小〜中堅企業ほどツール導入による混乱やムダを招きやすい
とくに中小〜中堅規模の企業では、リソースの関係で専任のIT部門や情報システム部門(情シス)などを設定できないケースがあります。そのため、現場主導でツールを導入することもあるでしょう。
しかし、管理体制が整っていない状態でツールを導入しすぎると、システムを使いこなせず結果的に業務効率の低下を招くかもしれません。また、資金面で余裕がないケースも多いでしょう。
このように、業務効率化のためにツールを導入したにも関わらず、結果的に現場の負担が膨らむのは、企業にとって大きな機会損失です。
オールインワンツールが向いているケース
このようにオールインワンツールは、利用できるツールが多様化している現代において、現場の混乱を招かず業務効率化を実現するシステムとして、注目を集めています。
とはいえ、すべての企業にオールインワンツールが向いているわけではありません。組織の規模や状況に応じて最適なツールが異なるため、導入を検討するにあたって基準を知っておきましょう。
それではまず「オールインワンツールが向いているケース」として、以下が挙げられます。
業務や役割がまだ固定化されていないケース
情報共有・進捗管理を一気通貫で整理したいケース
ツール運用にかけられるリソースが限られているケース
業務や役割がまだ固定化されていないケース
オールインワンツールでは、チャットのやり取りやカレンダー共有、オンライン会議の開催など、日常的な細かいタスクに対応した機能が搭載されています。そのため、日々の業務や従業員ごとの役割が固定されていない場合、オールインワンツールがおすすめです。事前にさまざまなシーンに対応可能なツールを導入しておけば、将来的にタスクが固定された際、ツールを追加せずともスムーズに進行できます。
具体的には「スタートアップなど成長期の企業である」「新チーム体制なので業務フローが頻繁に変わる可能性がある」といったケースで最適です。
情報共有・進捗管理を一気通貫で整理したいケース
オールインワンツールには、チャットやメール、タスク管理など、各種情報をチェックできる機能が搭載されています。情報共有の場を集約し、リアルタイムでやり取りできる環境を構築できれば、以下のように情報共有や進捗管理に関する課題を解消できるでしょう。
マニュアルに沿って進めるよう指示されたが格納場所がわからない
プロジェクト全体の進捗をチェックしたいが、個別の進捗状況がバラバラに保管されていてわからない
そのため「部署や組織全体で複数のプロジェクトが動いている」といった企業に最適です。
また、業務に関する情報を全員が常時チェックできれば、対応の属人化も防げます。例えば顧客から製品に関する問い合わせがあった際、契約プランや実装機能などの詳細を把握しているのが担当者のみの場合、不在時に対応できません。しかし、オールインワンツールで情報を一元管理しておけば、他の従業員が履歴をチェックし対応できます。対応スピードが早ければ、顧客満足度も高まるでしょう。
ツール運用にかけられるリソースが限られているケース
その都度特化型ツールを導入する場合、運用ツール数が多くなるほど、日々の管理にリソースを割かなければなりません。場合によっては、ツールごとで以下のような業務が発生します。
アカウントを発行する
従業員用に独自マニュアルを策定する
適宜使い方を0からレクチャーする
コア業務がある状態で、上記のようなタスクにリソースを割くというのは、企業にとって大きな負担です。とくに人員や資金が限られる中小・中堅企業では、なおさら対応が難しいでしょう。
オールインワンツールであれば、ひとつのシステムの使い方を覚えればさまざまな機能を活用できるため、複数ツールより手間なく管理できます。(カスタマイズなどがなければ)支払い先も一本化できるため、支出を抑えられるでしょう。
中小・中堅企業はもちろん、「新チームを立ち上げたばかりで多くの予算を確保しにくい」といったケースにも最適です。
オールインワンツールが向いていないケース
一方でオールインワンツールは、以下のようなケースでは向いていないかもしれません。
業務要件が高度・専門特化しているケース
既存ツールがすでに深く定着しているケース
優れた機能性のツールでも、自社の状況にマッチしなければ実力を発揮できないため、十分に注意しましょう。
業務要件が高度・専門特化しているケース
ツールによって異なりますが、オールインワンツールは「幅広い業務でまんべんなく活用すること」を想定し作られています。そのため、一般的なチャットでのやり取りや情報共有などは可能ですが、以下のように特殊なケースでは対応が難しいかもしれません。
会計や開発といった専門性が高い業務で活用したい
高度な分析を実施したい
自社で独自性が高いフローを組んでいる
例えば、基本的な勤怠管理であればオールインワンツールでも実行できます。しかし、「シフト管理も行いたい」「規定の残業時間や休日出勤回数が超えた場合にアラートを入れたい」といった運用を想定している場合、勤怠管理に特化したツールを使うほうがよいでしょう。また、自社独自の承認フローを組んでいる場合、ツールによっては柔軟に組めない場合があるため、事前に要件を確認しましょう。
このように、専門性が高い業務を中心に行ったり独自の進め方を採用したりしている場合は、特化型ツールを導入したほうがよいでしょう。
既存ツールがすでに深く定着しているケース
「全国の支社や店舗で長年同じツールを使っている」「ベテランの従業員が多く0からのツール導入は現実的に難しい」などの理由で既存ツールが深く定着している場合、オールインワンツールへの切り替えは慎重に検討しましょう。無理に新ツールへ移行すると、現場の混乱を招き、定着まで想定以上に時間がかかるかもしれません。
もしオールインワンツールへ移行するのであれば、まずは特定の部門やチーム、店舗など、範囲を限定して進めることがおすすめです。小規模から試験的に開始すれば、仮に導入が想定通りにいかなくても、組織への影響を最小限に抑えられます。
オールインワンツール導入時の失敗パターンは?回避のコツも解説!
実際にオールインワンツールを導入する際の失敗パターンとしては、主に以下が挙げられます。
機能数だけで選んでしまう
自社の業務整理をせずに導入する
将来の拡張・縮小を考えていない
せっかく費用をかけて導入するのであれば、自社の課題を解消できるツールを使いたいでしょう。こうした失敗を回避するコツまで解説しているため、ぜひ参考にしてください。
機能数だけで選んでしまう
オールインワンツールには、さまざまな業務に対応できるよう幅広い機能が搭載されています。一見すると、多機能なツールのほうが活用の幅が広がって、有用に思えるかもしれません。
しかし、選ぶ際に「機能数の多さ」のみを基準にすることは避けましょう。漠然と機能数の多さのみで選ぶと、「高いコストを支払ったが現場のフローにマッチしていなかった」といったことが発生し、結果的に機能をフル活用できないかもしれません。
また、すべての機能を使いこなすまでに、現場で教育したりマニュアルを整備したりといった手間もかかります。
このように「資金的なコスト+学習面のコスト」が大きくなるため、十分に注意しましょう。
【回避するためのコツ】
最初に「どの業務を効率化したいのか?」という目的を整理しましょう。目的を定め活用の方向性を明確化することで、「どの機能をベースに使えばよいか?」がわかり、要件にマッチしたツールを選びやすくなります。
例えば「チャット上のやり取りで業務をなるべく完結させたい」という目的であれば、チャットを中心に幅広い機能を集約できるツールがよいでしょう。「タスク管理の抜け漏れを減らして管理したい」という目的なら、タスク管理をベースに幅広い機能を活用できるツールがおすすめです。
自社の業務整理をせずに導入する
自社の業務を整理せず導入すると、具体的に「どこまでをツールで効率化するのか?」を判断できません。「とりあえず幅広い業務をツールに置き換えよう」と設計すると、人の判断やコミュニケーションが必要な範囲にまで影響してしまい、結果的に業務効率が下がる可能性があります。
【回避するためのコツ】
まずは現状の業務状態を把握したうえで、具体的なツールの導入範囲を判断しましょう。例えば「定型業務を自動化し企業戦略の設計にリソースを割きたい」という場合、議事録作成やメール作成、レポート作成といった定型業務を多く洗い出したうえで、その中からオールインワンツールの導入範囲を決めるとよいでしょう。
将来の拡張・縮小を考えていない
事業成長や市場の変化などに伴い、自社の業務状況は変動します。こうした変化が起きることで、オールインワンツールの導入後に「想定以上に事業規模が大きくなったので効率化する範囲を増やしたい」「過度な自動化でトラブルが発生したので人力でのチェック範囲を増やしたい」というイメージで、運用方法を見直すケースもあるでしょう。
しかし、機能を柔軟にカスタマイズしにくいツールでは、上記のような変化に対応しきれません。対応範囲を変更できず、必要な機能をリアルタイムに活用できなければ、ツールを導入した意味は半減します。
【回避するためのコツ】
機能の拡張・縮小を踏まえ、カスタマイズしやすいツールを選び、将来的に自由に変更できるよう意識しましょう。設計を見直せるツールなら、以下のようにさまざまな状況に対応できます。
現場の従業員の声を踏まえ自動化の範囲を変更する
すでに定着している既存ツールと組み合わせる
支社や店舗の増加に伴って効率化の範囲を広げる
いずれの場合も、業務の現状を考慮しつつ「ツールを固定化しすぎない」という判断が大切です。
「オールインワンツールを導入したから解決!」と極端に考えない意識が大切
このようにオールインワンツールは、あくまで自社の業務課題を解消する「手段のひとつ」に過ぎません。業務の整理や将来的な拡張性などを考慮せず、とりあえずの感覚でツールを導入しても、本来の恩恵は受けにくいでしょう。
業務課題を解消し高い費用対効果を発揮するには、先ほど解説したポイントを改めて意識することが大切です。
機能数だけで選ばずに導入目的から逆算してツールを選ぶ
自社の業務を整理し導入範囲を明確化しておく
導入範囲の将来的な拡張・縮小を踏まえ対応可能なツールを選ぶ
もし業務状況をチェックした結果、「既存ツールで十分対応できる」「新規ツールを入れると現場の混乱を招く」となったなら、無理にオールインワンツールを使う必要はありません。
このように、本当に導入すべきかは企業の状況に応じ異なるため、マッチした選択をすることが重要です。
必要に応じ外部の専門家の力を借りよう
「実際にどんなツールを選べばよいかわからない」「そもそも業務範囲の洗い出しってどうやるの?」といった不安を抱えているのであれば、専門家へ相談することもおすすめです。マーケティング支援会社などであれば、プロの知見をもとに業務の洗い出しやツール選定に関するサポートを受けながら、オールインワンツールで高い成果を出せるよう伴走してくれます。
支援会社のプランによっては、導入後にツールの成果を計測し、運用方法の改善策まで提案可能なため、初めての企業でも安心して利用できるでしょう。