マーケティングDXが失敗する6つの典型的なパターン
マーケティングDXが失敗する典型的なパターンとして、主に以下6つが挙げられます。
DXツールを導入して満足している
目的が曖昧なままツールを導入して終わる
経営陣と現場の間でDXに対する温度差が発生している
社内データを適切に統合しておらず施策判断に活かせていない
ツール利用や施策の設計などが属人化しており社内で運用が定着しない
成果指標(KPI)が形骸化している

DXツールを導入して満足している
マーケティングDXでは、CRMやSFA、MA、BI、CDP、DMP、AIなどの各種ツールを導入し、自社のマーケティング活動を変革することが一般的です。例えば、以下のようなイメージです。
社内にある幅広い顧客情報を分析してニーズを読み取り新サービス開発に活かす
ECサイトで特定の商品ページの閲覧回数が多い顧客へ関連商品のポップアップ広告を配信する
見込み顧客の購買意欲をスコアリングしてアプローチの優先順位を判断する
既存の優良顧客の特徴を分析し「有望なリピーターになりそうな新規顧客」を洗い出す
しかし、上記のような施策を実行せずツール導入だけで満足してしまうと、マーケティングDXは失敗しやすくなります。どれほど高機能で優れたDXツールを導入しても、「社内で運用体制を整備しておらず利用が形骸化する」「施策の振り返りを行わず惰性で運用する」といった状況に陥ると、ツールを利用する意味がありません。
目的が曖昧なままツールを導入して終わる
マーケティングDXの推進に向けたツールを導入する際は、以下のような目的設定が大切です。
アプローチする見込み顧客の優先順位を判断しリソースを適切に配分したい
過去の顧客情報を分析してニーズを洗い出し、新サービス開発に活かしたい
効率的に新規顧客をリピーターへ引き上げる施策を設計したい
定型業務を自動化して売上に直結するコア業務へ多くの人員を割きたい
こうした目的が曖昧な場合、自社で必要なツールの機能や要件、操作性などを正しくイメージできません。十分な検討や準備を行わずにツールを導入してしまうと、「目的達成に必要な機能が充実しておらず現場でなかなか利用が定着しない」「現場の従業員がスムーズに使える操作性ではなかった」などが発生してツールが利用されなくなり、結果的にマーケティングDXを推進できません。現場の従業員からしても、目的が明確化されていないと新しいツールへ切り替える理由がわからず、活用へのモチベーションが上がりません。
経営陣と現場の間でDXに対する温度差が発生している
マーケティングDXを推進するにあたって、以下のように経営陣と現場の間で温度差が生じるケースがあります。
経営陣がDX推進について正しく理解しないまま、ツール導入だけを先行させている
経営陣が「ツール導入=DXが成功」と勘違いし、その後の改善へ積極的に関与しない
現場へ運用を丸投げしてしまう
現場の意見を吸い上げず経営陣のイメージだけで推進している
上記のような温度差が発生していると、「現場の課題解消につながらないツールを導入して利用が定着しない」「担当部署に十分な予算や人員が投下されず全社での取り組みが難しくなる」などが起こりかねません。また、「AIを使って何かやってほしい」といった曖昧な指示が現場に降りてしまい、負担が大きくなるケースも考えられます。
社内データを適切に統合しておらず施策判断に活かせていない
マーケティングDXでは、以下のように幅広い社内データを統合・活用することが一般的です。
会員登録している顧客の情報
過去の購買履歴
ECサイト上の行動履歴
展示会やセミナーなどで交換した名刺の情報
過去のアンケートや問い合わせ内容
商談履歴
過去のマーケティング施策の実行結果
上記のような幅広い顧客情報を集約・分析することで、例えば「自社サイトを複数回訪問しているユーザーへ関連商品の広告を配信する」「新規契約につながった顧客の特徴を洗い出しアプローチする見込み顧客の優先順位を決める」というイメージで、効果的なマーケティング施策の設計に役立てられます。
一方でこうしたデータが集約されていないと、顧客のニーズや要望、悩みなどを分析する材料が限られるため、効果的な施策を設計できません。仮にデータが統合されていても「保存データに抜け漏れがある」「表記揺れがあり名称が統一されていない」などの問題があると、情報を正しく読み取れず分析に支障をきたすことも考えられます。
ツール利用や施策の設計などが属人化しており社内で運用が定着しない
DXツールの利用やデータ分析、施策の設計などには専門的な知識が必要です。そのため企業によっては、知見を持つ人材へ任せきりになるケースもあります。しかし特定の従業員に運用が属人化すると、退職などで担当者不在になった場合、他に運用できる人材がいないためDX推進が停滞しかねません。
成果指標(KPI)が形骸化している
マーケティングDXを推進する際は、ゴールとは別で中間目標となる「KPI」も設定します。具体的なKPIの指標は目的によっても異なりますが、例えば以下が挙げられます。
CVR/CTR/CPA/新規リード数/サイトの訪問数/資料ダウンロード数/メール開封率/顧客単価/LTV/商談化率/受注率/CAC/パイプライン額 |
こうしたKPIを数値で設定することで、ゴール達成までに「どの項目が・どのくらい不足しているのか?」を定量的に把握し、正しい方向性で施策を改善できます。
しかし運用途中でKPIが形骸化し、定期的に振り返らなくなるパターンもあります。計測を怠って数値の変化を把握しなければ、最初に細かくKPIを設定しても改善に活かせず意味がありません。
「戦略・人・データ・文化」の4つの観点から考えるとDX推進の失敗原因を整理しやすい
上記で紹介した主な6つの失敗原因については、以下の4つに分類すると特定しやすいためおすすめです。
主な失敗原因 | 具体的な状況(例) |
|---|
戦略 | |
人 | 経営陣がマーケティングDXの重要性を理解していない 経営陣と現場の間でマーケティングDX推進への意欲に温度差がある 現場の従業員がDXツールの効果的な運用方法を理解できていない DXツールを扱える人材が社内にいない
|
データ | 社内の顧客情報を統合できていない 集約データに抜け漏れや項目の重複などが発生している 自社の目的に必要なデータを集められていない データを分析する知見が蓄積されていない
|
文化 | 現場にDX推進やツール利用への意識が浸透しきっていない 現場のDXツール利用をサポートする体制が整っていない 社内フローに合わせたツールの運用マニュアルが整備されていない マーケティングDXの推進部署や担当者が決まっていない
|
いずれか(あるいは複数)に該当していると、マーケティングDXを推進できず失敗する原因になるため注意してください。
例えば「経営陣がマーケティングDXの重要性を理解していない」という場合、ツール導入や施策の実行に向けて十分な予算・人員を投下しにくくなり、なかなかマーケティングDXを推進できません。あるいは「現場のDXツール利用を推進するサポート体制が整っていない」というケースでは、ツール利用に関する現場の疑問点や不安を解消できず、推進のモチベーションを保ちにくくなります。
マーケティングDXを立て直すために意識すべき4つのポイント
もし現状のマーケティングDXに失敗を感じている場合は、立て直しに向けて以下4つのポイントを意識してみてください。
自社のビジョンを踏まえつつマーケティングDXの導入目的を再設定する
社内での運用体制を整備する
社内の顧客情報の管理体制を見直す
施策を継続的に改善できる仕組みを改めて整える

自社のビジョンを踏まえつつマーケティングDXの導入目的を再設定する
マーケティングDX導入によるゴールが曖昧にならないよう、改めて「実施する目的」を設定してください。最終目標を明確化することで、以下のようなポイントを正確に判断し、適切な方針でマーケティングDXを推進できます。
どんな要件や機能のツールが必要か?
具体的にどの情報を集約すればよいか?
ツールを使って取り組むべきマーケティング施策は?
推進に向けてどのくらいの予算や人員を確保すべきか?
社内でどのようなサポート体制を作るべきか?
目的については、自社の経営目的と紐づけることも大切です。企業理念やビジョンと絡めたゴールを設定することで、目的達成に向けて必要なアクションを全社で判断しやすくなります。例えば「顧客に貢献し満足度を向上する」という旨のビジョンを掲げているとします。その場合、マーケティングDXで「過去の顧客情報を分析しニーズにマッチする施策を提供する」といった目的を掲げることで、適切なフォローを実現し最終的な企業全体のビジョン達成にもつながるかもしれません。
社内での運用体制を整備する
上記で解説したように「そもそも経営陣がDX推進を理解していない」「運用が属人化している」という状況に陥ると、思うように推進できません。そのため以下のようなポイントを意識し、社内でマーケティングDXの運用体制を整備してください。
積極的に現場の意見を吸い上げて導入ツールや施策を決定する際に反映させる
社内で専任部署やチームを設けて運用ノウハウを蓄積する
共通の運用ルールを設けて、営業やマーケティングなどの部署を問わずスムーズに連携できる体制を整備する
定期的に現場へヒアリングし「ツールへのフィードバック」「施策への要望」などを吸い上げて反映させる
社内勉強会や研修を通じてDX推進の意義や目的、ツールの使い方などを共有する
定例ミーティングを実施してツールの効果や施策の成果などを振り返り、次回に向けて改善する
現場でのマーケティングDX推進を定着させるには、上記のように企業から積極的に体制を整え働きかけることが大切です。
社内の顧客情報の管理体制を見直す
自社の目的にマッチした顧客情報を洗い出し、適切に施策へ反映させるために、データの管理体制を見直してください。マーケティングDXの目的から逆算すると、自社に必要なデータを判断しやすくなります。
顧客情報の管理では、先ほど解説したようにCRMやSFA、MA、BI、CDP、DMP、AIなどの各種ツールを利用することが一般的です。こうしたツールは「社内の顧客情報を一元管理・分析し施策の設計に役立てる」ということを目的に作られているため、膨大な顧客情報を可視化し、スムーズな管理を実現できます。
また、よりスムーズにデータを活用するために、以下のように「顧客情報を扱う際のルール」を設けてください。
データを扱える役職者やポジションなどの権限を決めておく
データの入力規則(正式名称・略称や全角・半角などの違い)を定める
削除するデータの基準を決めておく
施策を継続的に改善できる仕組みを改めて整える
マーケティングDXに向けた取り組みを成功させるには、施策の運用成果を継続的に振り返り、次回に向けた改善点を洗い出す意識が大切です。毎回の取り組みで改善点や評価ポイントを洗い出すことで、次回以降の施策を改善したり成功パターンを別の取り組みに反映したりできます。
よくある「やり直しDX」の落とし穴

一度マーケティングDXで失敗しても、上記のポイントを意識すれば巻き返すことは十分に可能です。ただし、実際にやり直す際は、以下の落とし穴にハマらないよう注意してください。
過去の取り組みに捉われて「抜本的な見直し」ができない
外部パートナーへ改善を丸投げしてしまう
現場利用が浸透する前に安直に新ツールへ切り替える
過去の取り組みに捉われて「抜本的な見直し」ができない
企業によっては「せっかくコストを使ったのに失敗と思いたくない」と考えてしまい、抜本的な見直しができないかもしれません。確かにコストや時間、人員を投下した施策をやり直すというのは、意外と勇気がいるものです。
しかし、過去の誤った取り組みを正当化し、根本的な原因を修正しないまま施策を進めると、やり直し後も同じ失敗を繰り返す原因になります。再び同じ失敗を繰り返すと、投下したコストや時間がさらに無駄になり、長期的に大幅な業績ダウンを引き起こしかねません。また、もし現場で「同じ施策を繰り返して失敗するうえ責任はすべて現場へ転嫁される」といった事態が起きれば、職場環境の悪化を招きます。
こうした状況を回避しマーケティングDXを成功させるには、過去の取り組みに捉われずに根本的な失敗原因を洗い出し、次回の改善に活かすことが大切です。
外部パートナーへ改善を丸投げしてしまう
マーケティングDXを推進する際に、外部の広告代理店などに業務を依頼するケースもあります。外部の専門家であれば、専門的な知見を踏まえ客観的な視点から、マーケティングDXの失敗原因を取り除けることが期待できます。
しかし、だからといって過去の取り組みの振り返りや改善施策の設計などを、外部パートナーへ丸投げすることは避けてください。すべてを任せてしまうと、「目的への認識にズレが生じ異なる想定の施策を設計してしまう」「現場の予算やリソースでは対応が難しい取り組みを提案してくる」といった事態が起きかねません。
そのため、外部パートナー主導で進めつつ、自社でも「使えそうな顧客情報を積極的に提供する」「定期ミーティングの場で要望や方向性を適宜細かく共有する」といったイメージで協力することが大切です。
現場利用が浸透する前に安直に新ツールへ切り替える
失敗を取り返すために、新しいDXツールの導入を検討するケースもあります。しかし、そもそも現場での利用が定着していない状況で、安直に新しいツールを導入することは避けてください。
もちろん、ツールを入念に使い込み現場からのフィードバックを踏まえた結果として「自社にマッチしない」と判断し、新しいツールを導入することは効果的です。しかし、そもそも現場利用が定着していなければ「自社にマッチしたツールなのか?」ということ自体を判断できません。場合によっては、社内での運用体制を整備しツールの利用率を高めた結果、理想通りの成果が出るという可能性もあります。
そのためマーケティングDXで失敗したとしても、安直に新ツールへ切り替えるのではなく、まずは現場で利用し運用データを蓄積してから別ツールの導入を検討してください。