1. TikTok Shopとは?
1-1.TikTok Shopの仕組みと特徴
TikTok Shopは、TikTokアプリ内で商品紹介から購入、決済までを完結できるEC機能です。
これまでのSNSが「集客→ECサイト誘導」という流れだったのに対し、TikTok Shopは「動画→その場で購入」という“シームレスな購買体験”を実現しています。
主な特徴は次の3つです:
① 動画やライブ配信と連動した“発見型EC”
ユーザーが動画を見ている最中に、画面上に商品リンクが表示され、タップひとつで商品詳細ページへ。気に入ればそのままアプリ内で購入できます。
これにより、「気になる→調べる→忘れる」という離脱が減り、衝動買い・感情的な購買を後押しできます。
② アプリ内完結の購入フロー
外部ECサイトへの遷移は不要で、TikTokアカウントでそのまま決済が可能。ユーザーにとってストレスが少なく、コンバージョン率向上に貢献します。
③ インフルエンサーやクリエイターとの連携も可能
商品を紹介してもらう「アフィリエイト機能(アフィリエイト商品リンク)」も搭載されており、販売者と発信者が分業できる仕組みも整っています。「商品力はあるが発信力が弱い」店舗と「発信力はあるが商品がない」クリエイターが互いの強みを活かし合え、幅広い層での拡散が期待できます。
TikTok Shopは単なる“動画での販売”ではなく、動画・ライブ・購入の動線が統合された次世代ECプラットフォームです。
店舗を持ちながらSNS販促も行っている経営者にとっては、「売れる場所としてのSNS」を体感できる絶好の機会といえるでしょう。
1-2. 従来のECサイトとの3つの違い
TikTok Shopは、これまでの楽天やBASE、Shopifyといった従来型ECサイトとは大きく異なる“動画起点の購買体験”を提供します。以下の3点が、特に大きな違いです。

従来のECは「探して買う」ですが、TikTok Shopは「出会って買う」という全く違う体験を提供します。こうした違いから、「動画×EC」の強みを活かし、商品との偶然の出会いを生み出す新しい販売手法を求める実店舗経営者にとって、注目すべきチャネルとなっています。
1-3. なぜ今、実店舗経営者に注目されているのか
TikTok Shopは、2025年に日本での本格展開が始まったばかりですが、今こそ実店舗経営者が注目すべきタイミングと言えます。
その背景には、以下の3つの変化があります。
① 来店だけに頼らない売上構造が求められている
インターネットの普及により消費者の購買行動が変化し、「来店=売上」という図式だけでは不安定になりつつあります。
地域に限られない販路やリピート導線の確保が求められる中で、“見つけてもらえるEC”であるTikTok Shopは、オンライン販売を始める第一歩として注目されています。
② 実店舗の「人柄・空気感」が動画で伝わる時代に
TikTokでは、商品だけでなくお店の雰囲気や店主の人柄までもが“コンテンツ”になるのが特徴です。
「ただの通販」では表現しきれなかった“お店の魅力”が、動画を通じてファン化や来店動機につながるケースも増えています。
③ スマホ1台でも始められるハードルの低さ
出店費用は無料、動画撮影もスマホで完結。ライブ配信もスマホ1台で始められるため、スマホで写真や動画を撮影したことがある方であれば参入ハードルは決して高くありません。
「本格的なECは難しそう…」と感じていた層にもフィットしやすく、“今こそ始めどき”のプラットフォームと言えます。
これらの理由から、TikTok Shopは「Web集客に挑戦したい」「ECをこれから始めたい」と考える実店舗経営者にとって、極めて親和性の高い販促チャネルとして注目を集めているのです。
2. 実店舗経営者が知るべきTikTok Shopのメリット・デメリット
2-1. 【メリット】若年層への新規リーチが可能
TikTokは10〜30代の利用者が中心で、若年層に強い影響力を持つプラットフォームです。
TikTok Shopを使えば、動画を通じて商品やお店の存在を自然に知ってもらうことができ、新規顧客との接点が広がります。
実店舗だけでは出会えなかった層にも、手軽にアプローチできるのが大きな魅力です。
2-2. 【メリット】動画コンテンツで商品の魅力を最大化
静止画や文章では伝えづらい商品の魅力も、動画なら「動き」や「使い方」、「スタッフの想い」まで伝えられます。
たとえば:
雑貨なら「手触り」や「サイズ感」
飲食なら「調理シーン」や「香ばしい音」
美容なら「施術前後の変化」や「スタッフの接客」
このような情報をリアルに届けられるのが、動画販売ならではの強みです。
2-3. 【メリット】低コストでの集客チャネル確保
TikTok Shopは、初期費用や月額費用がかからず、出店も無料。
スマホとアカウントさえあれば、広告費をかけずに集客が可能です。
特に、動画が“バズる”ことで一気に多くのユーザーに届くため、費用を抑えながら広い認知を得られるのが大きな魅力です。
2-4. 【デメリット】運用工数とスキル習得の必要性
TikTok Shopを活用するには、動画撮影・編集・投稿を日常業務に組み込む習慣化が欠かせません。
スマホでの簡易編集でも始められますが、定期的な投稿やライブ配信にはある程度の工数と慣れが必要です。
さらに、TikTokはアルゴリズムやトレンドの変化が早いため、「試す→分析→改善する」という運用力が売上に直結します。
2-5. 【デメリット】ブランドイメージとの適合性リスク
TikTokはカジュアルでテンポの速い投稿が主流のため、落ち着いた雰囲気や高価格帯のブランドとは相性が合わない場合もあります。
動画の見せ方によっては、ブランドの世界観が崩れてしまうリスクも。
参入前に、「TikTokのノリ」と自社のブランドイメージがマッチするかを見極めることが大切です。
3. TikTok Shop出店方法
TikTok Shopの出店は、基本的にオンライン申請だけで完結します。
スマホやパソコンから手軽に始められる反面、事前に準備すべき書類や審査項目を把握しておかないと、申請でつまずくケースもあります。
この章では、出店に必要な条件・準備・手続きの流れを、初心者にもわかりやすく解説します。
3-1. 出店前に確認すべき条件
TikTok Shopに出店するには、以下の基本条件を満たしている必要があります。
日本国内に在住、または日本法人であること
販売可能な商品ジャンルであること(禁止商品に該当しない)
本人確認書類や事業証明書類が提出できること
個人事業主でも法人でも出店は可能ですが、一部のカテゴリ(医薬品・酒類など)には制限があるため、事前確認が重要です。
3-2. 必要書類一覧と準備のポイント
出店申請時には、以下のような書類が必要です。
▶ 個人事業主の場合
本人確認書類(運転免許証・パスポートなど)
銀行口座情報(個人名義でも登録可能)
▶ 法人の場合
登記簿謄本
代表者の本人確認書類
銀行口座情報(法人名義)
いずれもスキャンやスマホ撮影での画像アップロードが可能なので、準備ハードルはそれほど高くありません。
事前に書類をそろえておくと、申請がスムーズに進みます。
3-3. 申請手順を詳細解説
TikTok Shopの出店申請は、TikTok Shop Seller Centerから行います。
おおまかな流れは以下の通りです。
アカウント作成(TikTokアカウントと連携)
出店形態の選択(個人 or 法人)
書類アップロード・本人確認
店舗情報・銀行口座の登録
審査(通常1~3営業日程度)
審査が通過すると、すぐに商品登録やショップ運営を始められます。
スマホだけでも手続き可能なので、空き時間を活用して出店準備が進められます。
3-4.手数料は?初期費用ゼロでも始められる?
TikTok Shopは、初期費用・月額利用料ともに無料で始められるのが大きな特徴です。広告を出さずとも、動画やライブ配信の工夫次第で低コストな集客・販売が可能になります。
販売手数料は、通常「売上の約7%」(2025年7月時点)。この中には決済手数料も含まれているため、追加で支払う必要はありません。
また、スタートアップ支援として、登録45日以内に必要な初期設定を完了し、商品を3点アップロードすると、90日間は手数料が3%に割引されるキャンペーンが実施されています。
「まずはリスク少なくチャレンジしたい」「ECの初期費用がネックだった」という方にも、TikTok Shopは取り組みやすい販路です。
4. 競合プラットフォーム比較|楽天・Amazon・メルカリとの違い
4-1. 各プラットフォームの特徴比較表
まずは、主要なECプラットフォームの特徴を一覧で比較してみましょう。

4-2. TikTok Shopに向いている業種・商品カテゴリ
TikTok Shopは、動画で“使い方”や“感情”を伝えやすい商品と相性が良いです。
特に以下のような業種・商材に向いています:
雑貨・インテリア:使用シーンが伝えやすく“映える”
コスメ・美容品:ビフォーアフターや使い方が可視化できる
アパレル・小物:サイズ感・着用感などが動画で分かる
飲食・スイーツ:食感・香り・音など感覚に訴えやすい
サロン・体験系サービス:スタッフや雰囲気も含めて伝えやすい
逆に、単価が高く慎重な検討が必要な商材(高級家電など)や法人向け商材は、TikTokよりもAmazon・楽天が適しています。
4-3. 実店舗オーナーの選び方:どのプラットフォームが最適か?
どのECプラットフォームを選ぶべきかは、**「誰に、何を、どう届けたいか」**を軸に考えるのが基本です。
たとえば、20〜30代の若年層に向けて手頃な雑貨やファッション小物を「雰囲気や使用感」ごと伝えたい場合は、動画で感情に訴えられるTikTok Shopが適しています。一方、信頼性を重視して幅広い世代に届けたい場合は、楽天市場やAmazonといった既存の大手モールが候補になります。また、個性のある一点モノや手づくり品を手軽に販売したいなら、メルカリShopsも検討の余地があります。
ただし、楽天やAmazonは初期コストや出店審査のハードルが比較的高いため、「まずは低コストで始めたい」「SNSの延長線上で販売を試してみたい」という方には、TikTok Shopが最も導入しやすく、売上にもつながりやすい選択肢となります。
「誰に」→ ターゲット層(年齢・性別・ライフスタイル)
「何を」→ 商品の特性(価格帯・ジャンル・ブランド力)
「どう」→ 伝え方(動画による共感訴求/文字情報による比較重視)
このように自店舗の強みやターゲット像に合わせて、販路を選ぶ視点を持つことが重要です。
5. 売上アップのための運用戦略
出店して商品を登録しただけでは、なかなか売上にはつながりません。
TikTok Shopでは、「どのように見せて」「どう伝えるか」が購買に大きく影響します。
とはいえ、特別な機材や知識がなくても大丈夫です。
実店舗の店長でも今日から始められる、売上アップのための3つの運用戦略をご紹介します。
5-1. 商品動画作成のコツ(スマホでの撮影テクニック)
TikTok Shopでは、動画の第一印象が売上を大きく左右します。スマホだけでも工夫次第で十分なクオリティが出せます。
▼ 撮影のポイント
自然光 or リングライトで明るく見せる
手元や使用シーンを中心に映す(利用イメージが伝わる)
3秒で惹きつける構成に(冒頭に「ビフォーアフター」や「使い方」)
編集アプリは「CapCut」などTikTokと連携できるものが便利です。
スマホを固定できる三脚があると、撮影も安定します。
5-2. ライブコマース活用法
ライブ配信は、リアルタイムの接客・即時購入を促す強力な手段です。
実店舗での接客経験がある人ほど、親和性が高いのが特徴です。
▼ 成功のポイント
商品の使い方やこだわりを“接客風”に話す
コメントでの質問にその場で答える
ライブ中限定の「割引・プレゼント」など特典をつける
緊張せず、普段の接客をそのままライブに置き換える感覚でOKです。
リハーサルより「まずやってみる」ことが大切です。
5-3. インフルエンサーとのコラボレーション戦略
TikTok Shopには、インフルエンサー(クリエイター)に商品を紹介してもらう仕組みが整っています。
販売者は、商品を登録し、提携を希望するクリエイターとマッチング可能です。
▼ コラボのポイント
自社商品と親和性のあるジャンルの発信者を選ぶ
視聴者層が“見込み客”と合っているかを確認
商品の魅力を簡単に伝える資料や使用方法を共有する
店舗単体では届かない層にも商品を知ってもらえるため、無理なく販路を広げる方法としておすすめです。
6.成功事例|TikTok Shopで売上を伸ばしたブランドの工夫とは?
TikTok Shopは、実店舗を持つ企業だけでなく、すでにEC販売を行っているブランドにとっても「新たな収益源」として活用されています。ここでは、実際にTikTok Shopを活用して成果を上げた2つの事例をご紹介します。
①MySmile|動画とライブ配信を活かし、3カ月で売上100万ドル越え
ホワイトニング製品を扱うMySmileは、ShopifyやAmazonに加え、TikTok Shopを新たな販売チャネルとして導入。以下のような工夫で成果を上げました。
オーガニック×広告×アフィリエイトのハイブリッド戦略
実際の使用感を伝えるインフルエンサー投稿・ライブ配信の活用
TikTok Shopのスタートアップ支援・Shop Adsをフル活用
結果として、TikTok Shop経由のGMV(商品総取引額)は3か月で100万ドル以上に。広告費も効率よく活用でき、他チャネルよりもCPA(顧客獲得単価)を80%削減することに成功しました。
参考:TikTok for Business - TikTokマーケティングによるブランドの成長事例
②KimChi Chic Beauty|ライブ×広告の連携で、わずか3カ月で売上75倍
アメリカ発のコスメブランド・KimChi Chic Beautyは、TikTok ShopのLIVE配信と広告機能を活用し、わずか3カ月で大きな成果を上げました。以下のような工夫で売上拡大に成功しています。
LIVEショッピングを軸に、購入導線を明確にしたコンテンツを展開
商品の魅力や使用感を伝える構成で、視聴者とのエンゲージメントを強化
Spark Adsでオーガニック投稿を広告化し、自然な訴求で認知拡大
コンテンツ制作と運用を短期間でモデル化し、効率的に量産
結果として、TikTok Shop活用後90日間でGMV(商品取引額)は75倍に増加。製品の平均クリック率も238%向上し、フォロワー数は1万人以上増加。短期間でブランド認知・売上ともに大幅な成長を実現しました。
参考:TikTok Shop