PCやスマホが普及している今の時代、企業の販促やマーケティングのツールとしてはWeb広告が主流です。
一方で、Web広告が増えるほど悪意のあるトラフィックによって過剰にインプレッションを増やすアドフラウドが問題視されています。
アドフラウドはWeb上の不正行為であり、企業の広告戦略にも大きな支障をきたすため早急な対策が必要です。
この記事では、アドフラウドの基本的な仕組みや種類、必要な対策を解説します。
アドフラウドとは？仕組みと危険性、担当者がすべき対策を解説
目次
アドフラウドとは？
アドフラウドとは、ウェブ広告に対する不正行為のことです。例えば、不正な方法で広告表示やクリックを発生させることが挙げられます。アドフラウドのターゲットとされた場合、不正な広告インプレッションによって正常なアクセス解析が行えないため、長期的なWeb広告戦略の立案が難しくなる可能性があります。
無効なトラフィックのうち、悪意のあるトラフィックがアドフラウドに分類されます。アドフラウドの動機としては、ライバル企業によるネガティブキャンペーンやハッキングなどが挙げられます。また、個人による愉快犯のようなものもアドフラウドの一種です。
アドフラウド対策ツールを提供する「株式会社Spider Labs」の調査「アドフラウド調査レポート2022年通年版」によると、ウェブ広告の5.0％がアドフラウドの可能性があり、2022年国内のアドフラウドの被害額は1,335億円と超えると算出しています。アドフラウドへの対策は、企業担当者にとって急務といえるでしょう。
参考：PR TIMES「アドフラウド被害は年間1,335億円超えか、Spider AFが「アドフラウド調査レポート2022年通年版」を発表」
アドフラウドに関するトレンド
アドフラウドは個々の企業だけでなく、検索エンジンにとっても大きな脅威です。何の対策もせず、アドフラウドの格好の標的になってしまえば、長期的な広告収入の低下を招くだけでなく、ユーザーから見ても信頼性が低くなるからです。
検索エンジンの大手として知られるGoogle、Yahoo!も、それぞれ独自の手法によってアドフラウド対策を行っています。
Googleでは膨大な件数のアドフラウドを解析し、機械学習とフィルタリングを組み合わせることで悪意のあるトラフィックの排除を実現しています。また、継続的な調査研究によって新種のアドフラウドへの知見を深めている点も重要な対策の1つです。
一方、Yahoo!ではアドフラウドの解析と判定を外部の専門機関に委託し、自社サーバーとクラウドを連携させることでアドフラウド対策を図っています。
アドフラウドの種類
インターネット広告に加えSNS広告など、ウェブ広告の種類が多様化する今、アドフラウドも年々複雑化しているため、それぞれの種類を知り、変化に合わせた対策が必要です。
ここでは、アドフラウドのなかでも特に問題になっているものを解説します。
クリックジャッキング
クリックジャッキングは、既存のウェブサイトにダミーのリンクやボタンを被せることで意図せぬアクセスや不正操作を引き起こすアドフラウドです。
透明なダミーのボタンをユーザーにクリックさせることで、不正送金や意図せぬ商品購入、個人情報の漏洩など、さまざまな問題に発展します。
クリックジャッキングが仕込まれたサイトには悪意のあるサイトへのリンクが埋め込まれているため、<iframe>などのタグをチェックすることで検知可能です。
アドスタッキング
アドスタッキングとは、複数の広告を重ねて表示する手法です。表面上は1つの広告しか表示されていないように見えますが、実際にはその下に複数の広告が隠されています。
インプレッション課金では、広告が表示された回数に応じてトータルの出稿料金が決まるため、ユーザーの目に触れていない広告に対しても料金が発生します。結果として無駄なコストが積みあがっていくのがアドスタッキングの問題点です。
隠し広告
隠し広告とは、ユーザーに見えない形で広告領域が確保され、バックエンドでインプレッションとしてカウントされる手法です。透明な広告や背景に隠された広告が一般的ですが、肉眼では確認できないほど小さなサイズの広告も隠し広告に含まれます。
隠し広告が仕込まれた場合、ユーザーには広告が見えませんが、サイトのインプレッションにはカウントされるため、インプレッションによる課金が発生します。結果として広告主は無駄な広告費を支払うことになり、広告の効果が低下するのが問題点です。
過度なリロード
過度なリロードとは、ウェブサイト上で広告を短時間のうちに大量に読み込む行為を表し、広告インプレッション数を人工的に増やす不正な手法として知られています。
ユーザーが実際にはページを一度しか訪れていないにも関わらず、広告インプレッションが複数回カウントされてしまうため、余計な課金が発生するのが問題点です。
広告インジェクション
広告インジェクションとは、ウェブサイトやアプリケーションに本来の内容とは異なる広告を意図的に挿入する不正な手法です。ユーザーの同意なしに広告を挿入し、広告主の意図したターゲットに対して広告が表示されないため、広告の効果が減少します。
また、広告インジェクションが仕込まれると本来のコンテンツがユーザーの目に触れず、サイト満足度の低下につながります。また、不正な広告を読み込む分だけサイトの読み込み速度が落ちるため、ユーザーエクスペリエンスの面でも悪影響です。
ボットネット
ボットネットとは、多数のコンピュータがネットワークを通じて連携し、1つの指示によって制御されるコンピュータ群のことです。ボットネットの多くはサイバー犯罪者によって遠隔操作されます。
ボットネットが問題視される理由は、自動化プログラムによって悪意のある操作を大規模かつ大量に組み込む点にあります。ターゲットのサーバーやネットワークに侵入後、マルウェアによってDDoS攻撃やスパムメールの大量送信、重要データの漏洩などを仕掛けるのです。そして、ボットネットは基本的にバックエンドで作動するため、目立った症状が出るまでなかなか感染に気づきにくく、知らないうちに被害を拡大させてしまう点が問題です。
ボットネットによる無自覚なスパムメールや機密情報の漏洩は顧客からの信頼低下に直結します。そのため、広告主としては早急な対応が必要です。
アドフラウドが広告主に与える3つのデメリット
アドフラウドにはデメリットしかありませんが、特に大きな点は以下の3つです。
広告予算が過剰に摂取されてしまう
正しい成果が測れず、広告改善のPDCAが回せなくなる
ブランドイメージの低下を招く
広告予算が過剰に搾取されてしまう
アドフラウドは、自動的に発生させた悪意のあるインプレッションやクリックによって、実際には無価値なトラフィックに対して支払いを発生させます。
例えば、ボットネットによって生成されたトラフィックはサーバー側にダミーの広告インプレッションを認識させ、広告主に無駄なコストを負わせます。
広告は費用対効果をあらかじめ分析し、利益が支出を上回るように計算したうえで出稿するのが基本です。しかし、アドフラウドが仕掛けられると支出のほうが上回るため、広告を出すメリットが薄くなってしまいます。
正しい成果を測れず、広告改善のPDCAが回せなくなる
アドフラウドによって生成される不正なデータは、本来の広告効果を見えにくくする原因となります。なぜなら、アドフラウドによって不正に発生したトラフィックは、ユーザーの正しい動向を反映しているデータとは言えないからです。
また、分析によって得られた広告効果は新たなビジネスの開拓にもつながります。アドフラウドによって広告効果が歪められるとユーザーの動向を正しくつかめず、将来的なビジネスチャンスの損失を招きます。
広告効果を含めた現状分析は、PDCAサイクルになぞらえればPlanにあたります。アドフラウドによって計画段階から認識のずれが生じれば、正しい実行案、改善策は成り立ちません。このように、アドフラウドは企業の健全なビジネスサイクルを阻害し、長期的な生産性の減少を招きます。
ブランドイメージの低下を招く
アドフラウドによる攻撃はサイトだけでなく、企業そのもののブランドイメージ低下につながります。
ブランドイメージの低下は、消費者やビジネスパートナーからの信頼を損ない、長期的なビジネス戦略においても悪影響を与えかねません。
例えば、不正な広告ネットワークによって広告がアダルトコンテンツや違法なダウンロードサイトに表示される危険性があります。
また、アドフラウドによってユーザーが本来望んでいるコンテンツとずれが生じるため、ユーザーエクスペリエンスの低下を招きます。サイトの離脱率が高まるとGoogleの評価の面でも悪影響です。
不正な広告表示は、ブランドイメージが著しく損なわれるため、ユーザーとの信頼関係構築のうえでもネガティブな影響があります。
広告にフェイクニュースサイトやスパムへのリンクが含まれている可能性もあり、大規模な損害賠償に発展するリスクもゼロではありません。
ブランドイメージの低下は、企業の将来性にも大きく影響します。
広告担当者が行うべきアドフラウド対策
アドフラウド対策は、広告の配信結果を正しく把握し、予算の無駄遣いやブランドイメージの低下を防ぐために非常に重要です。
アドフラウドの被害から多くの企業を守るため、Googleは広告主向けに正しい対策法を発信し、適切な情報提供に務めています。企業にできることとしては、Google等の検索プラットフォームが提供する情報に基づき、継続的なリサーチと実践によってアドフラウド対策を行うことが挙げられます。
ここでは企業担当者が行うべき主なアドフラウド対策を4つ解説します。
広告の配信結果を正しく把握する
広告配信を継続的にモニタリングし、適切なフィードバックを行うことは、アドフラウドを含めた不正なプログラムの排除に有効です。
例えば、広告のトラフィックデータを定期的に抽出し、モニタリングすることで異常なパターンや急激な変動を早期に発見できます。
ささいな異常を早期に発見すれば対策もよりスピーディになり、被害も最小限に抑えられるでしょう。
reCAPTCHAなどのCAPTCHAを追加する
CAPTCHA(Completely Automated Public Turing test to tell Computers and Humans Apart)とは、ユーザーがボットではないか確認するためのテストです。「reCAPTCHA」は、キャプチャを利用することでアドフラウドの検知・排除が行えるツールです。
アドフラウドの多くは自動化プログラムによって作動しているため、ボットを検知することでアドフラウドの防止につながります。reCAPTCHAは、Googleが提供する高度なキャプチャシステムです。簡単なチェックボックスをクリックする形式でbotか人間かを区別するV2や、ほぼ作業を必要としないV3などがあります。
ユーザーの動向を注視する
ユーザーの動向を細かく追跡し、データ化することで、不正な広告トラフィックの早期発見につながります。
例えば、ある時期から突然サイトのアクセス数が落ち込んだり、エンゲージメント率が著しく低下したりしている場合は、悪意のある広告によってユーザーが遠ざけられている可能性があります。
調査を依頼する
外部の専門機関やサービスに調査を依頼することでより正確で信頼性の高いデータを得られます。不正クリックや異常なアクセスが見られる場合、Googleに調査を依頼することでアドフラウドの可能性を判別可能です。
調査を依頼する際は、以下の情報が求められます。
不正クリックの日時
不正クリックの回数
課金されている金額
企業は早急なアドフラウド対策を
PCやスマホが普及している今の時代、企業の販促やマーケティングのツールとしてはWeb広告が主流です。
一方で、Web広告が増えるほど悪意のあるトラフィックによって過剰にインプレッションを増やすアドフラウドが問題視されています。
アドフラウドはWeb上の不正行為であり、企業の広告戦略にも大きな支障をきたすため早急な対策が必要です。
アドフラウドはどのような意味ですか？
アドフラウドはWeb上の「不正広告」、「広告詐欺」を表します。ボットなどの自動化プログラムによってインプレッションを過剰に増やし、不正な広告費を発生させる行為などもその一つです。
アドフラウドは、なぜ問題なのですか？
アドフラウドは以下の理由で重大な問題となります。
広告予算の浪費：実際に効果がない広告に対して費用を支払うことになる
データの信頼性低下：偽のデータによって広告キャンペーンの効果測定が歪められる
ブランドイメージの損失：広告が不適切なコンテンツや怪しいサイトに表示されると、ブランドの信頼性が低下する
マーケティング戦略の阻害：正確なデータに基づいた戦略の立案が困難になる
