そもそもCookieとは
そもそもCookieとは、ウェブサイトへ訪問したユーザーデータを一時的に保存する仕組みのことです。顧客の基本属性(年代や性別など)やサイト内の閲覧履歴、購入履歴、ログイン時のID・パスワード、サイトへの到達ルートなど、幅広い情報を保存できます。
このCookieの仕組みを利用することで、過去の情報をもとに「一度ログインしたウェブサイトへの再ログインが不要になる」「ECサイトの閲覧履歴をもとにオススメ関連商品を表示する」などを実現し、ユーザーの利便性を向上できます。
また企業からすると、蓄積したCookieデータをもとに「自社商品はどんな層に人気か?」「どのようなルートで自社サイトに到達するのか?」などを考え、適切なマーケティング施策を実行する際に役立つでしょう。
このCookieは、発行元の違いによって大きく以下3種類に分けられます。
ファーストパーティCookie
ユーザーが訪問したウェブサイトのドメイン自身が発行するCookieのことです。第三者を経由せずデータを収集できるため、自社サイト内のユーザー行動を精密に分析できます。
セカンドパーティCookie
「ユーザーが訪問した他社サイトのドメイン」が管理しているファーストパーティCookieのことです。他社サイトからCookieを購入したり共有したりすることで収集できます。
サードパーティCookie
自社サイトではなく「第三者のドメイン」が発行するCookieのことです。GoogleやYahoo!、Microsoftなどの媒体が発行しています。第三者が持つCookieを活用することで、複数のウェブサイトに蓄積したユーザーデータを利用し、サイトを横断した広告出稿やトラッキングが可能になります。
Cookieとリターゲティング広告の関係
このCookieの中でも「サードパーティCookie」は、リターゲティング広告の運用に大きく関わっています。
リターゲティング広告では、サードパーティCookieを活用し複数のウェブサイトを横断してユーザーデータを収集することで、他社サイトに自社広告を配信できます。「一度自社サイトを閲覧した=自社への興味・関心がある」というユーザーに絞って広告を配信できるため、より効果的なCVへつなげることが可能です。
【2024年08月最新】Cookie規制の動向
上記のように、サードパーティCookieがあることで、リターゲティング広告の高精度なターゲティングを実現できます。自社商品やサービスに興味を持つユーザーへ効果的にアプローチできるため、主要なマーケティング施策として活用する企業も多いでしょう。
しかしサードパーティCookieでは、複数サイトのユーザーデータを多くの企業が利用するため、プライバシー保護の観点で見ると「個人情報の流出や悪用」といった問題点があるのも事実です。こうした問題を解消するために、世界的にサードパーティCookieの規制が進んでいます。
Cookie規制が進む背景
Cookie規制が進む背景としては、企業による「個人情報活用機会の増加」が挙げられます。
インターネットやSNSなどで誰もがアクセスできる場所が増え、情報化社会が発展したことで、サイトの閲覧履歴やページへの到達ルートなどから個人を簡単に識別できるようになりました。識別が簡単になったことで、企業もリターゲティング広告をはじめとしたマーケティング施策や企業活動を実行する場面で、個人情報を活用しやすくなっています。
しかし、個人情報を取り扱う機会が増大したことで、ユーザーが「プライバシー侵害はないか?」「不当に個人情報が第三者に渡されるのでは?」といった不安を感じる機会も増えていきます。とくに、企業による個人情報流出が発生すると、そうしたユーザーの不安は大きくなるでしょう。
上記のような背景があり、個人情報保護を強めるためにCookie、とりわけサードパーティCookieの規制が進んでいるのです。
Cookieの規制進行状況
国内外を問わず、近年ではプライバシー保護の法律を制定する国が増えています。いずれの法律も、Cookieを完全に法律違反としているわけではありませんが、利用する際に厳しい制限を設けています。
例えばアメリカのカリフォルニア州では、「CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)」を制定しました。CCPAでは、企業にCookieの利用停止バナーなどの設置を義務付けて、ユーザーが「第三者へのCookie販売」を拒否できる状態を構築しています。
参照:個人情報保護委員会 | 外国制度(アメリカ合衆国)
また、国単位ではなく大手企業でもCookie規制の流れに対する動きを見せています。例として、Apple(Safari)では2020年からサードパーティCookieを完全にブロックできるようになりました。
さらに、サードパーティCookieを使用せずユーザーの行動を追跡できる「フィンガープリント」という技術にも規制が進められています。
フィンガープリントとは、ユーザーがウェブサイトを利用する際の以下のようなブラウザ情報を取得し、個人情報として活用する技術のことです。
使用言語
タイムゾーン
ブラウザの種類
OSの種類
画面の解像度
サードパーティCookieの代替手段として注目されていますが、Apple社がフィンガープリント作成防止機能を実装したように、「個人を特定する」という動き自体への規制はさらに強まっています。
一方、個人を特定できるような仕組みを規制するのではなく、プライバシーを保護できるような新しい方法を提案する企業もあります。Google(Chrome)はサードパーティCookieを廃止する方向で進んでいましたが、2024年7月、Cookieの廃止を撤回すると発表しました。
発表によると、Googleは「サードパーティCookieを廃止する代わりに、Chromeに新しい機能を導入する」としています。この新しい機能についての詳細は明らかになっておらず、現在協議中であることがわかっています。
参照:ウェブ向けプライバシーサンドボックスの新しいアプローチ
こうした世界の流れを踏まえると、具体的なユーザーのアクセス履歴などの詳細な情報を特定できる技術への規制や、プライバシーを保護できるような技術の発展がより進んでいく可能性があるでしょう。
Cookie規制がマーケティング施策に及ぼす影響とは
従来のマーケティング戦略では、サードパーティCookieを活用し、ウェブサイトを横断したユーザートラッキングによって実現できる施策が数多くありました。
▼サードパーティCookieの活用例
リターゲティング広告の配信
アフィリエイト広告の配信
ウェブ広告の効果測定
アトリビューション分析(CVに至る全経路を解析しポイントごとの ”CVへの貢献度” を計測する手法)の実施
しかし、Cookieの規制により以下の影響が発生することで、今後はサードパーティCookieを活用したマーケティング施策の実施は難しくなります。
ユーザーの行動パターンの把握が難しくなる
リターゲティング広告の配信が制限される
ユーザーの行動パターンの把握が難しくなる
従来までは、サードパーティCookieを活用することで、以下のようにさまざまな側面からユーザーの行動を収集できました。
ユーザーが最も興味を持っている分野
商品購入に至るまでの経路(ウェブ広告経由・自然検索・SNS経由など)の把握
ビュースルーコンバージョン(自社広告を閲覧して離脱したがその後別サイト経由でCVすること)の計測
しかし、サードパーティCookieの規制によって、複数のウェブサイトを横断した数値やユーザー行動の分析はできません。自社サイトから直接CVしたルート以外を計測できないため、計測の精度は低下するでしょう。
リターゲティング広告の配信が制限される
リターゲティング広告では、サードパーティCookieに保管されている「複数ウェブサイトを横断したユーザーの行動履歴や興味・関心」をもとに適切な広告を配信します。しかし、規制によってサードパーティCookieのユーザーデータを活用できなくなれば、最終的にリターゲティング広告の配信自体が実施できない可能性があります。
Cookieに依存しないために今から対応すべきこと
このように、サードパーティCookieをはじめとして、世界的にCookie規制の流れが進んでいます。今後のさらなる規制強化に備え、早い段階でCookieに依存しない手法を把握しておき、対応を進めることが重要です。
具体的な対応策としては以下が挙げられます。
ユーザー理解の精度を高める
広告施策を見直す
自社保有データを活用する
SEO対策へ着手する
ユーザー理解の精度を高める
サードパーティCookieの規制強化によって、ウェブサイトを横断したトラッキングによるユーザーデータ収集には制限がかかります。複数サイトの情報を活用できない以上、自社内で「ユーザー理解の精度を高める取り組み」が必須です。
例えば、Google アナリティクス 4(以下GA4)で自社サイトの訪問ユーザーの行動を分析したり、 Google Search Consoleで流入ワードを把握したりするとよいでしょう。上記のツールを活用してユーザーの行動や興味・関心などを分析できれば、カスタマージャーニーを見直したり、より詳細なペルソナ像を構築したりできます。
自社内でより正確なユーザー像を把握する仕組みが整えば、サードパーティーCookieに頼らずターゲットに響く戦略を立案できるでしょう。
Google アナリティクス 4(GA4)について詳しく知りたい方は「GA4(Google アナリティクス 4)とは?|設定から実践までわかりやすく解説」をご覧ください。
広告施策を見直す
リターゲティング広告は、自社に興味を持つユーザーへアプローチできるため、マーケティング施策において重要な手法です。しかし、今後のCookie規制に備えて、他の広告手法の活用も検討しておきましょう。
▼リターゲティング広告以外の広告手法例
SNS広告(X(旧Twitter)、YouTube、LINE、Instagram、TikTok、Facebookなど)
アフィリエイト広告
リスティング広告
タイアップ記事広告
リターゲティング広告以外の手法に取り組む際は、各広告の特徴を把握して適切な施策を打つことが大切です。
例えばSNS広告の場合、リターゲティング広告のように「一度自社サイトを訪問したユーザーにのみ配信する」という絞り方はできないため、広告を表示するターゲットの幅は広くなります。
しかし、ターゲットの幅は広くなりますが、各SNSで年齢や性別などの条件でグループ化した「広告セグメント」の切り分けやターゲット設定などは行えます。そのため、事前にペルソナを洗い出し適切なセグメント分けやターゲット設定を実施すれば、自社に興味を持っている相手へ効果的にアプローチできるでしょう。
自社保有データを活用する
自社で保有するファーストパーティCookieのデータも積極的に活用しましょう。ファーストパーティCookieであれば、現状の規制はほとんどありません。
ファーストパーティCookieのユーザーデータは、一度自社と接点を持っているため効果的なアプローチ施策を考えやすいというメリットがあります。
ファーストパーティCookieを活用したマーケティング施策としては、メールマーケティングが挙げられます。メールマーケティングとは、自社の顧客リストに対してCVにつなげるためのメールを配信する手法です。
例えば、ユーザーの特定行動に合わせ状況に応じたメールを配信する「シナリオメール」や、見込み顧客属性に絞って配信する「ターゲティングメール」などの手法が挙げられます。上記のようなメール配信であれば、同じ内容を一斉配信する従来までの「メールマガジン」より、顧客の状態に合わせたアプローチが可能です。
SEO対策へ着手する
SEO対策とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンで記事を上位表示させるために行う施策のことです。検索エンジンのアルゴリズムを考慮しつつ、ユーザーにとって価値ある情報を発信することで、自社の記事を検索結果の上位に表示させていきます。
狙ったキーワードの検索結果で上位表示させられれば、該当キーワードに関心を持つユーザーが自社サイトを訪問する可能性が高くなります。そして、記事を読んだユーザーが自社コンテンツに価値や魅力を感じれば、最終的なCVにつながることが期待できるでしょう。
SEO対策は、広告運用と異なり即効性はありません。ユーザーにとって価値あるコンテンツを積み重ねることで徐々に成果が表れるため、長期的な視点での運用が必要です。しかし、一度検索結果で上位表示できるようになれば、リターゲティング広告のように追加の予算を投下しなくても長期的にユーザーを呼び込む資産となります。
可能であれば、自社のリソースを考慮しながら「広告運用で短期的に集客しつつ同時並行でSEO対策も進める」という方法がよいでしょう。
具体的なSEO対策の方法について詳しく知りたい方は「SEOとは?今日からできる対策と基本となる考え方」をご覧ください。