大量のデータを収集したり分析したり、今やあらゆるシーンで活用されているAI。広告業務での活用も例外ではなく、実際にクリエイティブ生成や運用などのシーンで、AIを活用している事例は多く存在しています。
とはいえ「AIで広告業務はどこまで置き換えが可能なのか?」など、疑問を感じてAIの活用に踏み切れない担当者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では自社の広告業務にAIを活用したいとお考えの方へ、活用できる分野や導入事例について解説します。
Cozies編集部
大量のデータを収集したり分析したり、今やあらゆるシーンで活用されているAI。広告業務での活用も例外ではなく、実際にクリエイティブ生成や運用などのシーンで、AIを活用している事例は多く存在しています。
とはいえ「AIで広告業務はどこまで置き換えが可能なのか?」など、疑問を感じてAIの活用に踏み切れない担当者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では自社の広告業務にAIを活用したいとお考えの方へ、活用できる分野や導入事例について解説します。
目次
現在AIは、ビジネスを含めあらゆるシーンで活用が進んでいます。
AIの活用事例(広告以外)
AI音声による有名歌手の音声再現
AIによる照明の自動操作
AIによる翻訳精度の向上
大量のデータ分析や文章・画像の作成、さらには機械の自動操作を強みとするAIは、広告のクリエイティブ制作や日々の運用でも十分に活用することができます。
では実際に、広告運用業務においてAIをどのように活用できるのかを解説します。
近年急速に普及している生成AIは、広告クリエイティブの制作に役立ちます。
生成AIの強みは、素早くかつ大量にクリエイティブを作成できる点、画像だけでなく動画や音声などあらゆる形式のアウトプットに適用できる点です。技術の進歩によって、架空の人物をAIで生成し、広告クリエイティブに活かすことも可能になりました。「広告イメージに合ったタレントを起用できない」場合でも、AIで生成・代替する選択肢が生まれたのです。
また、AIを活用して広告の成果・実績を分析し、消費者ニーズの洗い出しやターゲットのセグメント分けをすることも、ユーザーのニーズをより詳細に捉えた広告クリエイティブ生成につながるでしょう。
例えば、広告のクリエイティブや広告文の最適化を図るうえで有効な手法の1つに、ABテストの実施があります。短時間に大量のデータを処理できるAIを活用すれば、短期間で複数回のABテストを実施でき、PDCAサイクルをスムーズに回せます。得られた多量のトライアル結果は、広告の精度向上につながるのです。
特に、広告運用で成果を上げるには、狙ったキーワードで上位表示されることが必須です。競合よりも高い入札単価を設定することも一手ですが、無闇に引き上げて予算を超過することは防ぎたいものです。
そこで、AIを使って入札単価の自動調整を行えば、競合の入札状況を踏まえたタイムリーな運用を行えるため、広告の費用対効果アップが期待できるでしょう。
AIは広告業務においてもさまざまな場面で活用できますが、すべてAIで置き換えることは現実的ではありません。大切なことは、AIで置き換えられる部分はAIで効率化し、人は置き換え不可能な部分に注力することです。
ここでは、AIで代替できない広告業務を3つ解説します。
現状では、人間の脳と同じかそれ以上のレベルで、あらゆる問題に対して自律的に解決策を立案できるAIは存在しません。また、現行のAIツールは完全ではなく、最新のトレンドを踏まえたクリエイティブ作成や著作権のリスク回避などはAIだけでは不十分です。そのため、最終的な意思決定はまだまだ人間が担う必要があります。
AIは多量のデータを短時間に処理することに強みがあるものの、その分析結果はあくまでも過去のデータに基づくものです。
しかし、実際は時代背景や社会情勢など、過去のデータだけでは予測できない要素でトレンドが形成される可能性もあります。そのため、AIによるクリエイティブや提案を過信せず、最終的には人間がトレンドを広告クリエイティブ・運用に反映させていかなければなりません。
また、AIが分析するデータ自体が不正確であれば、AIが導き出す答えも不正確なものになります。そのため、悪意をもったハッキングや世論操作によってデータが操作されると、分析結果が消費者ニーズを正確に反映したものではなくなるリスクにも留意しなければなりません。
著作権法第30条の4によると、著作権者に利益を不当に害さない限りは生成AIで製作したクリエイティブは自由に使えると解釈できます。
(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用 に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合
引用:e-GOV法令検索「著作権法第30条の4」条文
ただ、既存コンテンツとAIによるクリエイティブが酷似している場合は著作権侵害とみなされるリスクは否めません。
もし、広告クリエイティブに著作権侵害が認められた場合は、信頼低下や損害賠償などの被害が発生する恐れがあります。実際に、海外ではすでにAIによる創作物において著作権侵害が認められた事例があったようです。
万が一のことがないよう、AIで生成した広告クリエイティブも人の目で著作権侵害が疑われないか確認が必要です。
AIを自社の広告業務にどう活用するかイメージを固めるには、まずは他社の事例を参考にすることもおすすめです。
そこで本章では、AIを広告業務に活用した事例を3つ解説します。
広告代理店A社では、AIでバナー広告の効果予測を実現するなど、さまざまな分野でAIを活用しています。
バナー広告はWeb広告で一般的な手法ですが、キーワードや文字のフォント、色合いなど無数のバリエーションで作ることが可能です。ただ、バリエーションが多い分ユーザーから高い反応が得られるバナー広告を作り続けるには、蓄積されたノウハウを活かした属人的なスキルに依存しがちであることが課題でした。
そこで、広告代理店A社では、業種特性に応じてバナー広告の効果予測ができるシステムを開発。これにより、デザイナーの習熟度によらずに複数のバナーから最適なものを選択し、よりユーザーから高い反応が期待できるバナーを配信しています。
ECサイトを主軸としているインターネットサービスB社では、見込み客の確保が課題でした。そこで、ウェブ広告経由の見込み客確保を狙い、AIを用いてウェブ広告の配信先の精度向上を試みたそうです。
具体的には、自社サイトユーザーの購入履歴や属性データなど900種類以上のデータを取得・分析し、消費行動を洗い出しを実施。これにより、購買実績はないものの既存のユーザーと近い特性のユーザーを見込み客とみなし、ウェブ広告を優先的に配信することにしたのです。
この施策を通じて、他社類似サービスと比較してクリック率や購入率が大きく向上したそうです。また、外部団体より表彰されるほど外部からも高く評価されています。
消費財メーカーC社では、商品イメージに合致して、かつ消費者に受け入れられるCMを、安価に作成することに課題をもっていました。
CMといえばタレントが起用されることが一般的ですが、著名なタレントや声優を起用するとCM1本でも数千万以上になる場合も。また、起用したいタレントのスケジュールが合わないことや、タレントの不祥事でブランドイメージが棄損されるリスクも考慮する必要があります。
しかし、AIで商品イメージに合致したタレントを生成すれば、2ヶ月足らずの制作期間かつ数百万円程度でタレントを確保できるのです。現在は技術も進歩しており、AIタレントの表情は自然で、言われなければAIと気づかないほど。さらに、タレントのスケジュール調整や不祥事のリスクを回避できる点もメリットです。
これまで予算やタレントとのスケジュール調整の点で、作りたい広告クリエイティブを作れなかった場合でも、AIを使う選択肢ができたことで広告作成の幅が広がった、良い事例といえます。
AIは幅広い分野で活用されており、広告分野でもクリエイティブ生成や運用の効率化、さらにはデータを用いた施策精度の向上などを目的に導入した事例が多数存在しています。
広告業務にAIを活用することで、業務の負担軽減に加えターゲティング精度の向上も可能です。これにより、多様化する消費者行動を捉えて緻密な広告戦略を実施できます。
ただ、AIを広告業務に活用するには、著作権侵害やトレンドへのキャッチアップなどの課題もあることに注意が必要です。AIだけで広告分野の業務を完結させることは困難で、人のサポートに過ぎません。最終的な意思決定は、あくまでも人の手で行うことが必須です。
広告業務でAIを活用できる場面は、例えばクリエイティブ生成や広告運用が挙げられます。特にデータ処理に強みがあるため、ターゲティング精度の向上を図る活用が期待できるでしょう。
AIだけで広告業務を完結させることはできません。AIは過去のデータから分析を行うことには長けていますが、既存データからは図りかねる事象が起きた際や、人の感情を考慮した判断はできないため、最終的な判断は任せないほうがよいです。また、トレンドの反映や著作権侵害のリスク回避も、現状AIだけでは困難です。